『農業と建築会社との二刀流』道場町アスパラ農家 植田さん

『農業と建築会社との二刀流』道場町アスパラ農家 植田さん

山々に囲まれた田んぼが広がるのどかな土地に、大きなハウスが4棟並んでいます。
約10R(約1反)のハウスで日量30キロ、多い時で約100キロを出荷されるという
アスパラ農家の植田さんにお話を伺いました。

【どうせやるなら大きくしたい!忙しくても面白い農業と建築業の両立】

道場町で農業を営まれている植田さんは、アスパラや葉物全般、山の芋やお米なども栽培されています。
中でもアスパラは今のハウスで10年、それまで路地でも7年と合計17年やられています。

ちょうど取材時の時期からが収穫などで忙しくなるとのことで、
当日も寝る間もなく1時間仮眠してから取材対応いただきました。

そんな植田さんですが、実はもうひとつ別の顔を持たれていました。
なんと建築会社も事業として経営されており、ファームサーカースの内装も一部施工されたそうです。

植田さんが農業を始められたきっかけは、農協の職員をされていたお父様から家業として引き継ぎ、
現在はパートさん4名、男性社員1名、そして奥様との7名で規模を拡大しながら続けられています。

「農業の方が面白い」と、今日も植田さんご自身が朝から収穫してあちこちへ出荷するような状況との事です。

【一番美味しい「サイズ」にこだわったアスパラ】

植田さんの栽培されているアスパラは規格が30㎝と決まっています。
「アスパラは根元の方が美味しいので、その部分がなるべくたくさんとれるように」と考えられたベストのサイズが30㎝だそうです。
実はそのサイズがアスパラが養分を楽に吸い上げてくれて一番大きくなるサイズでもあるそうで、長年の経験から導き出された植田さん独自の「アスパラが一番良い評価をもらうためのこだわり」でもあると感じました。

ちなみに出荷サイズについては各農家さんでバラバラだそうで、特に決まりもないそうです。
産地として扱っている長野や香川は28㎝で出荷、といった規格がある地域もあるそうで、中には40㎝で出荷してほしい、というところもあるそうです。

イチ消費者として大きいのは当然嬉しい事ですが、農作物などは特に「この方が美味しい!」とこだわりを言われる方が、興味も持てれば共感もできるのでは、とあらためて考えさせられました。

品種についても取り扱いは「ガリバー」と「むらさき」の2種類のみ。
約20品種ほどあるアスパラの中からこの2種類を選んだ理由をお聞きすると、「ガリバーは色々試した中でこれが一番この土地の気候にあっている」とのことで、農業にとってとても重要な気候がマッチすることをこれまで色々試された中での結果がこの品種を選んだ理由になっていました。

ガリバーは1本太いのがでると他が細くなるそうで、実は出荷サイズが揃えやすいというのも特徴だそうです。
サイズがバラバラだとお客様も手に取っていただけないため、商品としての見た目にも品種選択のこだわりがあるようです。

ガリバーの味は甘いそうで、夏場の筋張った感じがなく高温でも柔らかく育つそうです。
そのため、4月から9月半ばころまで収穫が可能で、ファームサーカスのお盆の時期にもかなりの出荷をしていただけるそうです。
夏野菜のイメージが強い理由がすごく理解できました。

「むらさき」については実験で実施した品種ですが、なかなか色的にお客様はなかなか手に取ってくれないのですが実は糖度が一番高く、お湯につけると緑になるので味のこだわりをしっかり表現した貴重な品種です。

このむらさきの色は、ブルーベリーやナスなどに含まれるポリフェノールの一種の色素である「アントシアニン」が多く含まれているためとのことで、レストランなどではこのままサラダなどでも使用されているそうです。

ただ、「味はしっかりしているのですが採れ高が少なく商売にならない」と、10年ほど栽培しているが今だに難しいと、諦めず味へのこだわりを追求されていることをあらためて感じさせていただけました。

【栽培の苦労と肥料メーカーからのアドバイス】

農業を営む上で必ず向き合わないといけないひとつに、病気や虫などの被害があります。
当然アスパラも虫にやられると一気にダメになるそうです。

過去に路地で栽培している時は月に3回のペースで農薬散布をしていたそうですが、現在は年間3回と十分の一で済んでいるそうです。

これは肥料メーカーさんからのアドバイスとの事で、路地でやっているのを見てハウスでの栽培も提案してくれたそうです。

肥料についても水と栄養を液肥などの混合で送るそうですが、たくさんの肥料がいるそうです。
その肥料のメインは「魚カスを発酵させたもの」だそうでほぼ有機物しか使っておらず、
色々試した結果、魚カスを使った方が美味しく育つそうです。
ここにもこだわりの部分があらわれていますね。

ちなみに、アスパラは土から頭が出てきた時に太さが決まっているそうです。
アスパラは実は「百合科」らしく百合根が花弁の様になっていて、その花弁から1本のアスパラが出てくるそうです。

太さの種類としては3クラスに分けるそうで、一番細いのはパスタなどに使用されることが多く、調理方法によってお客様が買い分けをされるそうです。

販売方法は、メインはイオンや道の駅、JAの直売所もあり、大阪や神戸の飲食店さんにも卸しているそうです。
今後についてはネット販売にもシフトしていくことも考えられているそうで、すでにオンラインで販売しておられ、美味しいと評判になりリピートもたくさんいただいているそうです。

梱包もご自身でされているそうで、アスパラは立てておくと良いそうで、太陽があれば真っ直ぐ立てていれば光に対して曲がっていくそうです。
そのため、出荷するアスパラは曲がっているのは1本もないそうで、その辺りも品質へのこだわりを感じられるところでした。

【アスパラを特産に!】

幼少の頃からここ道場町で育った植村さんは、最初の仕事は建築業から始まり、21歳で会社を立ち上げられたそうです。
そのため建築業としての職人歴の方が長く、専業で農業を始められたのは約11年後の32歳からだそうです。

「家業として引き継がれた農業でアスパラを栽培しているのも、この地域にマッチしたから。」とありますが、そんなアスパラを「二郎のいちごくらいしかないこの地域の特産品にしたい!」と高い志を持って取り組まれている一面もあります。

「研修受け入れで、この集落でアスパラをやってくれる人が出てきた。」と話していただけましたが、実はアスパラを栽培しているのは植田さんのハウスともう1件の2件だけだそうです。

「特産になって、後ろをついて来てくれる人が居るとありがたい。」と、地域のことや農業のことを真剣に考えられていることがうかがえました。

「この地域が過疎なので、なんとか自分の代だけでも田んぼを保持できたら嬉しい。」
「そのためには農家を増やしていく。太陽光パネルだけが置かれる田んぼは嫌い。」
「田舎の田園風景が残せる経営をし続けたい。」と強い想いを聞かせていただけました。

「農業は儲からないイメージが強い。」と実情を懸念する言葉もありましたが、
「色々なことをやるより作物を絞り込んで専門で作る方が良いのでは?」と。
プロフェッショナルで極めたことが良いと断言されていました。

その裏付けに、「建築は現場2時間くらいで終わるけど、農業は次元が違う。」と、同じ事業でもそれぞれのことを真剣に取り組まれているからこそ言い切れる言葉の重さに、あらためて植田さんの作られるアスパラのこだわりに納得させられる取材となりました。

※記事は取材当時の内容となります。

【記・撮影 谷口】

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