継承と革新を繰り返す神戸の老舗企業 ~オリバーソース株式会社~

継承と革新を繰り返す神戸の老舗企業 ~オリバーソース株式会社~

三宮よりポートライナーで医療センター前にて下車し取材先の社屋へ向かうと、
その香りに導かれていつの間にか目的地に到着することができました。

本日は、神戸で最も大きなソースの製造企業となる「オリバーソース株式会社」に伺いました。 

今回の取材は、同社取締役の道満 龍彦さんにお話を伺いました。

歴史ある企業文化から生まれた伝統の味

創業1923年(大正12年)のオリバーソース株式会社は、
日本で最初のとんかつソースを販売した「濃厚ソースの先駆者」として知られた神戸の企業。

その歴史はとても興味深く、大阪の老舗醤油蔵の次男 道満清氏が
神戸でウスターソースを販売したのが始まり。

当時は神戸港にたくさんの外国人が居り、船の料理人たちが神戸で洋食屋をオープンしていたこともあり、
イギリス産のソースを輸入・販売し、そこから製造にこぎつけ居留地を中心にソースの卸売りを行っていました。

最初はウスターソースのみだった商品も、1948年(昭和23年)に2代目の社長がとろみをつけて一般に流通し、
日本で最初の濃厚ソースとなる「とんかつソース」が発売されたことが成長の大きなきっかけとなりました。

「染み込まない」ソースを追求する過程では、とろみの開発には製薬会社の研究所OBを会社に招き入れ、研究開発を行うほど、こだわりと同時に苦労を重ねての商品化だったそうです。

このとんかつソースも、当初は揚げ物をターゲットに開発していたそうですが、
実はそのとろみが評価されたのが「お好み焼き」との相性でした。
開発側も想像もしなかった商品の使われ方に驚かされたそうです。

「どろ」ソースの誕生

もうひとつ大きな成長の起点となった商品が「どろソース」。

「沈殿製法」と呼ばれる熟成させるソース製造の工程で、
底部に自然と沈降する水に溶けない沈殿物を最初はお店に渡していましたが、
3代目社長がそれに目をつけ、その沈殿物を使って商品化し「どろソース」と名付けて販売を始めました。

沈殿液は季節によって味のブレなどがあり、品質が安定しないため商品化は難しかったのですが、
開発へのこだわりの結果、会社を代表する商品が誕生することになりました。

そして1993年の販売後すぐに「そばメシ」ブームの影響でメディアなどでも取り上げられ、
全国に広まる商品となり売り上げも急増しました。

震災による会社としての分岐点

しかし、1995年の阪神・淡路大震災にて壊滅的な被害が出てしまい、
約1年間、製造もできない厳しい状況が続きました。

この出来事がきっかけで、ソース製造をやめて別の事業に転換することも考えたそうです。

しかし、なんとか難を免れたウスターソースの熟成タンクがあったことや先代からの想い、
何よりもお客様の声を考えた時に、再度ソース製造での事業再開を行うことを決めました。

事業再開にあたり、本社と工場をポートアイランドに移転しました。
震災前に使用していた設備の一部は、現在も現役で稼働中。

約25年前に建てられた本社兼工場は当時最先端の設備と評価され、
当初より人力による大変な作業工程をいち早く機械化し、
大胆な設備導入により生産性や品質維持を考えられていたそうです。

地産地消にこだわった新商品

神戸の農業の魅力を伝えようと「神戸の野菜でソースを作ろう!」をテーマに、
メディアや学生、ソースメーカーや自治体などが集まり「KOBE RESAUCE PROJECT」が発足され、
そこで生まれた新商品が「神戸クラフトソース」。

地方によって違いのあるソースの中で、特に関西は原料である野菜と果実の旨味を
味の特徴として全面に出しているそう。

そんな野菜と果実を全て神戸産にこだわり、約2年の歳月をかけ生まれた商品。

開発にあたり道満さんは、「野菜果実は生き物なので、安定させる技術が難しかった」と語る一方で、
「直接農家に行き野菜に触れ、農業の大変さや農家さんの想いを聞けたことが良かった。」と話され、
完成した商品に対して「歴史に残る商品にしたい!」と商品への想いを話していただけました。

「KOBE CRAFT SAUCE」(神戸クラフトソース)
内容量:350g
希望小売価格:1,382円(税込)

※こちらの商品はファームサーカス・マーケットでも販売中です。(数量限定)

ソースへの想い〜企業文化の継承

道満さんにソースへの想いを伺うと、
「美味しいソースを作って、たくさんの人に食べてもらうことに使命感がある」と、
小さい頃から慣れ親しんだソースに対して、その歴史の上に立っていることへの緊張感も感じました。

しかし「そんな自分が好きで、色々な活動もちゃんと答えが返ってくると嬉しいし、そこが面白い!」と、
企業文化でもあるチャレンジ精神を思わせる一面も見せていただけました。

当時日本でウスターソースが売れるかわからない中でも、
仕入れて販売し、さらにそれを国産ソースとして製造する英断をしたオリバーソース社は、
現代で言う「ベンチャー企業の先駆け」とも言えるでしょう。
チャレンジする精神が企業文化として根付いていることを強く感じました。

しかしそこに至るまでの苦労や努力は企業文化として語り継がれながらも、
大変さを感じさせない面白さの追求魂も、隠し味で見え隠れするそんなユーモアさもありました。

吉本芸人さんとのコラボCMなども長く続けている理由もそこにあるのだと思え、
面白いことを追求するイメージもしっかり持った、関西企業のカラーもしっかり持ち合わせていました。

“One Taste Is All It Takes !”
「たった一つの味、時にはそれがすべてをおおいつくす変化をもたらす。」

引き継がれるソースへのこだわりや企業文化でもあるチャレンジ精神からも、
今年98周年を迎える企業が目指す2年先の100年目には、
我々の食卓にたくさんの笑顔を届ける商品がもっとたくさん届くことを
ワクワクさせていただけるそんな素敵な取材になりました。

オリバーソース株式会社
https://www.oliversauce.com

オンラインショップ
https://oliversauce.shop

【記・撮影 谷口】

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