食農先生の師匠は「農チューバー!」
本日は、道場町塩田で農業をされている鍛治亜希子さんにお話を伺いました。
鍛治さんは、3ヶ所の畑でたくさんの種類の農作物を育てられていました。
農業とYouTubeとの出会い
今年の3月末まで地元の児童館に勤められており、そこにある一坪程の畑で子供達の自然体験に
じゃがいもやとうもろこしを栽培されてました。
食育に加えて、こうして農産物に触れ合う機会学び体験の事を食農といいます。
子どもたちへの“食農先生”の経験が、農業を始めるきっかけになったそうです。
そこから、まさかここまでどっぷり野菜作りに興味を持つとは思ってもなかったと、
ご自身でも驚かれてました。
まだ本格的に農業を始めて間もない鍛治さんですが、ご自宅では農協に勤められている旦那さんが
週末にだけやられる農業のお手伝いをされていたそうです。
しかし、実は先代は市場出荷用でレタスを栽培されていた農家さんで、
鍛治さんもそれを見ていたので抵抗なく取り組まれたそうです。
今では作付けしすぎて手がまわらないくらい多品種で少量の栽培をされており、
Webカタログを見てインターネットネットで種を購入して、近隣の農家さんがあまりやらない変わった作物に興味をもち、栽培されているとのことです。
そして農業については先代の祖母から教わる以外に、師匠は「YouTube」と語られ、
時間があれば「農チューバー」などを見るのが楽しく勉強になるとのことでした。
イチオシの「アロマレッド」
取材当時はレタスの旬が終わり、今からキャベツやブロッコリーを収穫していくとの事でした。
中でもカリフラワーは特に綺麗な出来栄えとなっており、
直接陽に当たって変色しないようにこまめに葉で遮光してあげて、
鍛治さんのそのひとつひとつの手間が美味しい野菜を育てているのでしょう。
キャベツも収穫が間に合わなければ大きくなりすぎて困るそうで、
あくまでも自分で採れる範囲内で栽培していると話されていました。
別の畑では夏野菜を栽培されており、トマトなどは甘くて香りが良く
フルーツみたいな出来栄えとのことでした。
そんな中でも鍛治さんの今のイチオシは「アロマレッド」という人参で、
店にはもう少し太らせてから出荷するそうですが、取材当日はそのまま土から抜いて、
洗って食べさせていただけました。
とても甘く名前のごとくいい香りがする人参でした。
葉の部分もオープンで焼いて塩で食べても美味しいとの事でした。
様々な農作物を栽培
他にも、スナップエンドウやズッキーニ、レタスなども栽培されている鍛治さんですが、
ポップコーンも始められたそうです。
ポップコーンを始めたきっかけは、子供達と何か作業ができないかと思い、
時間も限られた学童保育の子供達が体験しやすい作物として選んだそうです。
そんなポップコーンは「爆裂種」と呼ばれ、比較的収穫まで好きな時に取りにこれて、
手をかけずに栽培できるのも良い点との事でした。
ちなみに、大沢町ではスイートコーンが多く栽培されておりファームサーカスでも人気ですが、
その美味しさからアライグマやカラスの被害に悩まされている野菜です。
しかし、ポップコーンの実はとても硬いため、動物の被害にあわず栽培することができるそうです。
実を乾かす作業は庭先でカゴに並べてできるので、鍛治さんの内職で対応しているそうです。
皆さんにも喜んで買っていただけるので、とても重宝している作物のようです。
夏に向けて新しく始める農作物
これから夏にかけて「夏ねぎ」や「北神くりなんきん」を栽培されるそうですが、
それだけたくさんの品種を扱うことが大変では?と問いかけたところ、
「全然苦になってなく楽しい」と明るく答えられました。
今までは仕事から帰ってきて限られた時間での農業だったが、
4月からは「専業」になったため、とてもやりやすくなったそうです。
最初はとても不安も多かったようですが、今では目の前に種を並べてはワクワクして、
苗を見ながら水やりをしながら、全てを楽しんで取り組まれているとの事でした。
そしてじゃがいもなども栽培されており、「メークイーン」「キタアカリ」「インカのひとみ」と
多品種をされており、中でも通称「デストロイヤー」と呼ばれる突然変異で生まれた仮面のような模様の
「グラウンドペチカ」という変わった品種も栽培されているそうです。
こちらもユーチューバーの影響を受けて始めたそうですが、「ポテトチップスにしたら美味しい!」と、
味の評価もしっかり聞かせていただけました。
他にも「ごぼう」なども栽培され、大沢でも田んぼのあぜに植える「枝豆」も、
コンパニオンプランツ(※1)として水を吸い上げてくれて育ちを良くする作物として栽培されてました。
※1)コンパニオンプランツ・・・一緒に栽培するとお互いにいい影響を与え合う、相性の良い植物の組み合わせのこと
「大根はへたくそ」「ほうれん草も失敗続き」と話される鍛治さんですが、
過去には足が絡まったような形の大根なども変わったアイデアで販売されていました。
商品名を「ラブリーな大根」や「セクシーすぎる大根」とネーミングし、
おもしろ大根シリーズとして店頭に出してみると普通では売れないものも売れるようになると、
見せ方の工夫なども楽しんで取り組まれる姿がありました。
子育てに変わる農業への想い
本格的に農業を始められ、手に負えなくなるほどたくさんの農作物を手がけられている鍛治さんですが、
あらためて醍醐味や面白さを伺いました。
「農作物が大きくなるのを見るのが楽しみ。」「台風や嵐の後はとてもがっくりする。」と話され、
知識がないときはほったらかしの時期が多かったですが、
知識を持つととにかく手をかけてしまうようになり状態が気になるようになったと話していただけました。
最近では師匠でもある「農チューバー」さんから返事をもらえる時もあるそうで、
ご夫婦でテレビよりもYouTubeを観ている時間の方が多いそうです。
これから
農協に勤められている旦那さまが数年で定年となるそうで、
その後は過去に台風で倒壊したハウスをあらためて建て、
もっと季節野菜をやってみたいと話されていました。
ご自身が栽培した作物を消費者の皆さんが手に取って「これはなんだろう?」と興味を持ち、
時には愛嬌も交えて買い物を楽しんでもらえたらいいなと。
「食卓に彩りを」
コロナ禍だからこそ新鮮な野菜で食を楽しんでほしいと、
まだまだ新しい作物に取り組もうとされている鍛治さんの
楽しそうなお話をたくさん聞かせていただきました。
【記・撮影 谷口】