「全ては味へのこだわり」異色の就農者
4年前から農業を始め、昨年ハウスを建てられたばかりの福永通凡(フクナガユキチカ)さん。
農業を始めるきっかけやいちごへのこだわり、これからのことについてお話を伺いました。
異色の就農者
実は21歳よりプロゴルファーとして活躍されていた福永さん。
メンタルスポーツとも言えるゴルフを続けられていましたが
25歳くらいの時に成績が振るわなく精神的にも厳しくなり
「このままではまずいな」と人生の他の選択肢を探し始め
ご家族やご親族にもゆかりのある音楽や料理など様々な別の分野に取り組まれたそうです。
そんな中、家庭菜園をはじめたところ「これだ!」と感じ、
「自分の作った美味しい食材が食卓に並び、それで生活ができるのは幸せ!」と
本格的に農業に取り組むことを決められました。
畑を借りて農業を始めることは簡単ではないのですが、大沢町出身の奥様の協力もあり実現。
まだ大沢町に移住はされていないそうですが、街も田舎も好きという福永さんは
「大沢町はいい人も多く役所などの受け入れ体制も整っていて、安心感がある。」と
すでに自身のスタイルにあった場所をしっかり見つけられていました。
味や育て方へのこだわり
ハウスは部材などを譲り受け、解体と建設で1年かけてご自身で建てられたそうです。
最初は無農薬野菜から始めたところ、地元の方から勧められていちごを栽培し始めたとのこと。
現在は「紅ほっぺ」と「章姫」の2品種を栽培しておられます。
来シーズンからは「食べ比べなどもしてもらいやすくなる。」と
身が固く流通にも適している「とちおとめ」を始められるそうです。
「無農薬の野菜をしている時に、家庭菜園でとちおとめを栽培していた。
その時の味が衝撃的に美味しくて、その味を今も求めている。」と
新しく始める品種にも大きな期待を寄せていました。
そんないちごは「土耕」で栽培されているのもこだわりのひとつ。
「土は感覚にちゃんと応えてくれる。それが自分にあっている。」と
腰に負担をかけながらも自身が好む味を引き出してくれている土耕を、辞めるつもりはないとのことでした。
身の膨らみは小さいけど、暖房を入れる時期にあえて切って寒くしたり水の量を調整したりと
厳しい環境下で育てると味が濃くなり野菜も固くなる。と
無農薬野菜をやっている時に学んだことを応用していちごにも試しているそうです。
「無肥料で厳しく育てていたトマトなども、比べ物にならないくらいの味になった。」と
過去に試したことでの経験で得た味を求めて、こだわりの育て方を探求しながらも
心から農業を楽しんでいる姿がありました。
ハウスは自由な空間
現在5棟のハウスを所有されている福永さん。
「でかい庭と思って自由に楽しんでいる。」と大変な作業を思わせず楽しそうに語っていました。
これから農業は流行るはずと話す福永さんですが、やはり始められた当初は大変だったそうです。
「最初の3年くらいは収入がない時期が続いた。」らしく
いよいよ厳しくなった時にいちごを始められたそうです。
しかし厳しかった時期も決して無駄な時間ではなく
無農薬や無肥料などを経験したことなどは、「食物本来の育ち方」を学べたと話されていました。
肥料がないところでの野菜の育ち方や、肥料を好んで美味しく育つ野菜
品種改良でできた野菜のことを知ってその野菜に必要なものを選択すること。
いちごも品種によって食べてみて少し味が薄くなったと感じると
温度を変えたり水を減らしたりして味を整えていき、こだわりの味に近づけていくそうです。
農業との向き合い
「農業はスローライフでゆっくりしていて、お金とは無縁。のような夢を描きがちだが
ちゃんと稼ぎながら楽しくやることが大切。」と語る一面もありました。
「稼ぐことは当たり前でそれをちゃんと成立させる環境ができれば
農業をする人や移住する人も増えるはず。」と
ご自身の経験や考えからも農業に対する期待や可能性を語られていました。
「一度きりの人生は楽しくしたい、でも全て自分のやったことが返ってくるのも人生。
特に農業はそれが顕著にある。それが楽しめるかどうか。」と
家庭菜園がきっかけで始めた農業も、こだわりの中でしっかり向き合っていることを感じられました。
「これからハウスも増え収穫も倍以上になっていき、ぶどうもできて理想に近づいていく。」と語る一方で
「やるからには周りの農家さんに負けたくない。」と負けず嫌いな部分もある福永さん。
これから農業を始めようとする人たちが
福永さんのようなスタイルで農業と向き合っている姿に触れることで
踏み出しやすくなるのでは、と思えた取材になりました。
福永さんが最後につぶやいた一言に想いが全て含まれている気がしました。
「みんなやればいいのに。」
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【記・撮影 谷口】