『農地を守る!〜未来に繋げたい畑仕事・農業の喜び〜』上大沢営農部会 辻功・大家喜八郎さん

『農地を守る!〜未来に繋げたい畑仕事・農業の喜び〜』上大沢営農部会 辻功・大家喜八郎さん

青々と広がるスイートコーン畑。
米と酒米に加え、スイートコーンとブロッコリーを作って農地を守る
上大沢営農部会の辻功さんと大家喜八郎さんにお話を伺いました。

【農業の基本は田んぼの“おもり”】
上大沢営農部会の活動は、後継者がいない農地を借り受け、
農作物を作るいわば、集落営農です。
若い人が都会に出る傾向は今も進み、その依頼は年々増えているのだそうです。
現在、10町の食べるお米と酒米、それに7〜8反のスイートコーンと
ブロッコリーの栽培を手掛けています。

自慢のスイートコーン畑で、営農部会の活動内容と若い人たちの
農業参入に寄せる思いについて取材させていただきました。

現在、部会は活動17年目。
役員7名を含め会員67名が所属しています。
もともと、「営農」は、補助金のもと、土地改良して農地をまとめ、担い手を作るのが目的でした。
しかし、農業者の高齢化が進み後継者へのバトンタッチが思うようにいかず、
農業ができないケースが増えたといいます。

【若い力に期待するが、難しい現状も・・・】
「実際には、外部からの新規就農が増えているが」と話す辻さんですが、
地元の後継者や若い人の就農への考え方は、営農とは程遠いのが現状だといいます。
ほとんどの農家が兼業農家で、週末(休日)だけ農作業をすることで精一杯。
営農の手伝いまではなかなか出来ない現状があります。
高齢者の増加と50年前から続く、減反政策。
それでも、「農地は一年でも何もしなければ、ダメになる」ことから
何も作らなくても、とにかく毎年、耕さなくてはならない。
田んぼの管理、地元の人間だからこそ、その土地を守りたい一心で草を刈り耕し続けている。
若い新規就農者との気持ちと実情のギャップを感じながら、
それでも、若い人が参加してくれないとしんどい・・・」と打開策を模索する日々です。

スイートコーンを作るようになったのは、約8年前。
大沢地区で「おいしい大沢」というプロジェクトが立ち上がり、その一環だったそうです。
新しい特産物を作り味覚狩りをしてもらうというもので、
冬はイチゴ狩り、夏はスイートコーン、秋は芋掘りを楽しんでもらうというものでした。

その後、愛知県に夏だけでなく一年中スイートコーンを作り、
最盛期には毎日一反近く(およそ4000本)を直販売で売り上げ、
年商2億円で潤う現場を目の当たりにし、改めてスイートコーンの高い商品価値を実感したそうです。

大沢地区では、スイートコーンの栽培から収穫までの期間は夏場の80日ほど。
しかし、そこでも悩みの種は人手不足でした。

【単価が高いスイートコーンは“雇用確保”への希望】
自分たちの土地と農業を守るため、新規就農者、
特に若い世代の人たちの常時就農の定着が急務と話す辻さんと大家さん。
そのためにも単価が高く人気の高いスイートコーンは魅力があり、
自分たちが畑づくりから収穫-出荷-販売まで仕組みを作っておくことが大切だと考えています。

しかし現状は、慢性的な人手不足です。
スイートコーンの植え付けは田植えの時期と重なり、
収穫は田植えが終わる頃から始まるといった具合で、
人手の需要が重なってしまう状態が続いています。

つまり、せっかく単価の高いスイートコーンの
生産量を増やしたくても「人が追いつかない」のです。

「ボランティアでもよいので、誰かがいればありがたいが、積極的にはできていない。
来年の話を今からしておかないといけないとは思うがやはり若干の技術がいるし、
自分がやった方が早いとつい思ってしまうところも・・・気長にやっていかないといけないが・・・」

最近は、定年退職した人が就農し、一反ほどの畑を
毎日熱心に耕して出荷もされるということが増えており、
また、近郊のニュータウンからの女性の参加でイチゴを中心に人手の賑わいがあるなど、
新規就農への広がりに期待感もあるといいます。
今は土日だけ農業をしに来る若い男性が多少いますが、常時来てもらえるとありがたいそうです。
また、仕事の大半を草刈りが占めるが、以前視察に訪れた営農の現場で、
非農家の人が手の空いた時間に、トラクターに乗って作業をしていたのを目の当たりにし、
そんな方向になれば嬉しいと話されていました。

【スイートコーンづくりは最高!農業は感動だ!】
農業の担い手が減る中、例えば大型のドローンが田んぼを
飛び回って農薬散布をするなど、新しい技術もとりいれています。
営農でいうと女性も含めて、常時5人くらい来てくれるとうまく仕事がまわるそうです。
10町の田畑を年4回草を刈り、人の背丈を超える畦の草刈りも一苦労。
とにかく、田んぼをお守りする・・・
「それくらいしっかりお守りしないと、いい農作物はできない。」
トラクターがあってもドローンがあっても、やっぱり人が増えることが一番だと、
しみじみ語る辻さんと大家さん。

苦労も心配もつきない農業ですが「農地を守って、やっぱり、収穫の楽しみ、それは感動です。
よいスイートコーンができれば、また感動する。待っている人がいて、
買ってくれると嬉しいし、ちょっとでも役にたったのかなと思う」

「生きるための基本を作っていると思う。
それを作って自分たちも生活できているのが幸せ。手塩にかけて、一年かけて。」

「衣食住は必ず必要でそれに関わる仕事はなくならないし、
ただきついから誰もしないでは済まないこと。だれかが必ずやらなければいけない。」

農地を荒らさず守る使命感、そして達成感。

農業へのひたむきな気持ちが伝わってきました。

逆らえない自然との共存の中に農業のやりがいを感じ、
未来に繋ぐ仕事としてこれからも奔走する上大沢営農部会のみなさん。

今年ももうすぐ手塩にかけたトウモロコシ畑が青々と風にそよぎます。

※記事は取材当時の内容となります。

【記・撮影 谷口】

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