『“こだわりを追求していく”という使命を掲げて。日本で初めてティーバッグの自動包装機を導入した紅茶界のパイオニア』

『“こだわりを追求していく”という使命を掲げて。日本で初めてティーバッグの自動包装機を導入した紅茶界のパイオニア』

日本で初めてティーバッグが作られたのは、神戸だということをご存知でしょうか。
1925年に創業された神戸紅茶株式会社(神戸市東灘区)は、
日本で初めてティーバッグの機械製造をした企業として日本の紅茶文化を牽引してこられました。

神戸は1868年の開港以降、様々な文化や食品が外国から舶来し、
異国情緒あふれる街として発展してきました。その中の代表的なひとつが「紅茶」です。
現在でも神戸は一世帯あたりの紅茶消費量がトップクラスで、
兵庫県全体で見ても紅茶の消費量が日本一です。


(日本で初めてのティーバッグ自動包装機“コンスタンタマシン”)

そんな神戸の街で、神戸紅茶の前身である“須藤信治商店”が創業しました。
創業当時は製造をメインとし、英国・リプトン社の紅茶の製造もおこなっていたのだとか。

1961年には日本で初めてティーバッグの自動包装機「コンスタンタマシン」を導入し、
紅茶の供給に大きく貢献されました。
なんとこのコンスタンタマシンは、現在でも一台が現役で稼働しているというから驚きです。


(左から順に、岡部さん、丸山さん、久保田さん)

今回お話を伺ったのは、代表の丸山さん、広報の久保田さん、シニアマネージャーの岡部さん。
代表の丸山さんは、2017年から責任者として着任し、2021年に社長に就任されました。
広報の久保田さんは入社3年目で、若手としてご活躍されています。
一方で、シニアマネージャーの岡部さんは入社して20年以上の大ベテラン。

若手の方もベテランの方も手を取り合ってご活躍されている事が、神戸紅茶の魅力のひとつ。
会社の雰囲気の良さがとても印象的で、お仕事に対する熱意も強くバイタリティに溢れていました。
そして何より、皆様から同じ強度で『紅茶を広めたい』という思いや、
紅茶への並々ならぬこだわりと愛情を感じました。
 
 

【神戸紅茶のクオリティを支える“紅茶鑑定士”】

神戸紅茶には『紅茶鑑定士』という紅茶のプロフェッショナルが在籍しています。
この紅茶鑑定士の方が、神戸紅茶の味と品質を徹底して守っておられるキーパーソン。

実は紅茶を一定の味に保つという事はとても難しい事なのだそうです。
紅茶には、上質な茶葉が収穫できる時期である“クオリティシーズン”というものがあります。
しかしクオリティシーズンに収穫した茶葉ならば必ず同じ美味しさになる、ということではありません。
同じ産地、同じ時期に収穫したものであっても、味や品質が毎年微妙に異なるのだそうです。
そのわずかな違いを見極め調整し、同じ味、同じ品質に保つのが、紅茶鑑定士なのです。

クオリティシーズンになると、神戸紅茶には世界各地の茶園から膨大な量の茶葉のサンプルが届き、
紅茶鑑定士がそれら全てをテイスティングします。
多い時で一日500杯以上テイスティングする事も。

長年の経験によって培われた紅茶鑑定士の舌は本当に些細なことも見極めてしまいます。
例えば届いた紅茶の中に、半年前に収穫されたものがあったとしても見抜いてしまうのだとか。

そうしてひとつひとつ自分の舌で確かめ、自社の商品として自信を持って提供できるものかどうかを確かめ、
同じ味になるようにブレンドし、クオリティを保っているのだそうです。

「クオリティシーズンのいい茶葉を買い付けて、みなさんに“良いモノを手軽な価格で提供できる”というのが神戸紅茶の強みだと思っています。だから神戸紅茶は、紅茶鑑定士なしには存在できません。」と、久保田さんは力強く仰っていました。
 
 

(2021年10月に発売した新商品“More Cup of Tea”)

【完成まで丸2年、想いの込められた想いと実現にいたるまでの道のり】

神戸紅茶では、先述したようにベテランの方や若手の方が等しくご活躍なさっています。
その一端が伺えるのが、昨年2021年の10月に発売した新商品のエピソード。

実はこの商品を企画したのは、広報やブランド戦略を担当されている久保田さん。
紅茶に本当にこだわっている事を伝えられる商品を出したいと、開発に至りました。
そうして生まれたのが、神戸紅茶では初となるテトラ型のティーバッグのシリーズ“More Cup of Tea”。
このシリーズの名前には「もう一杯飲みたくなる」そんな紅茶を提供したいという想いが込められています。

従来のティーバッグとテトラ型の違いは、より大きな茶葉を使用できる事。
ティーバッグは細かい茶葉を短時間でおいしい紅茶に抽出できる事に対し、
大きめの茶葉はリーフ本来の良さを引き出し、そのままの美味しさを楽しめるのだそう。

商品化に至るまで、久保田さんをはじめ全社員の方々で試飲して投票を行ったり、
何度も意見を出し合って改善を重ねてこられました。
“自信をもっておすすめできる商品をご提供できるように”という気持ちを胸に、
2年の歳月をかけてようやく納得のいくものが完成したそうです。

企画した当初は入社して1年だったという久保田さんが企画された事を、全社員で協力し合って実現する。
世代や立場に隔てなく、強い団結力をもって同じ方向に歩みを進めておられることが、
神戸紅茶の強みであり魅力なのだと感じました。
 
 

【守っていく事、変えていく事、伝えていく事】

神戸紅茶では近年、WEBショップやSNSにも力を入れておられます。
商品情報を発信するだけでなく、飲み方はもちろん、茶葉の違いや紅茶を使ったスイーツのレシピなど
多岐にわたるコンテンツを配信していて、気軽に紅茶の世界に触れられるようになっています。

そうして新しい商品やサービスが生まれる一方で、絶対的に変わらないのは、味へのこだわり。
長い歴史がある老舗だからこそ守っていくべきものがあるのだと、
強い使命感を持っておられる事がひしひしと伝わってきました。

「神戸紅茶だからこそできる事、神戸紅茶だからやらないといけない事をやっていきたいと思っています。こだわりを追求して、そのこだわった紅茶を適正な金額でお客様の元にお届けするというのが我々の使命です。多角的に手を出すのではなく“こだわり”というところに絞って茶葉で提供する。ここはゆるぎないです。」と、代表の丸山さん。

こだわりを追求するだけでなく、紅茶を広めていく事にも力を入れておられる神戸紅茶。
そこにあるのは“少しでも多くの人に紅茶の事を知ってほしい”という想い。

「きっかけは何であれ、紅茶を飲んでくださる人が少しでも増えて、紅茶の文化が少しでも広まればいいなと思っています。紅茶は、詳しくない人にとっては手に取り辛いと思うのです。でも本当は紅茶って、本格的なブレンドからフレーバーティーのような飲みやすいものがあるので、神戸紅茶では初心者から上級者まで楽しめるような紅茶をつくっていきたいです。そしてやっぱり、長く紅茶を愛していただけたらと思っています。」
そうお話してくださったのは、広報の久保田さん。

皆さんから等しく伝わる紅茶への愛情と徹底したこだわりには、ただただ頭の下がる思いでした。
 
 

【もうすぐ100周年。節目の時に計画している事とは?】

神戸紅茶は2025年で100周年を迎えられます。

現在は小売販売のみですが、100周年に合わせて店舗のオープンも検討されているそう。
紅茶のプロフェッショナルがいる店舗で、その日の天気や気分、そして神戸のスイーツと共に紅茶を楽しめるようなお店を計画しているのだそうです。

そしてこれはまだまだ先のお話ですが、代表の丸山さんはいつか神戸の山のどこかで摘み取り体験もできる自社茶葉園や宿泊施設、そして茶葉の工場など、体験型の施設を作れたらと考えているそうです。
もしも実現すれば、神戸の紅茶文化が飛躍する事間違いなしの素晴らしい計画です。
 
しっかりとこだわりを守りながらも、進化に貪欲な神戸紅茶。今後に期待は膨らむばかりです。
『こだわり抜かれたおいしい紅茶』というささやかなご褒美を自分に送ってみると、日常が少し豊かになりそうです。
 
<神戸紅茶さん公式HPはこちら>
<Instagramアカウントはこちら>
 
——
 
【おまけ。取材時に教えてもらった、おいしい紅茶を入れる為の3つのポイント】
紅茶をおいしく入れるポイントを教えていただきました。
細かく言えば、カップを温める、ティーコジ―を使う、などのステップもあるそうなのですが、
共通して言える大切な事があるそうです。
それは、次の3つ。

1. 温度
沸騰したての100度のお湯を使う事。
100度のお湯を使う事で茶葉が開き、茶葉本来の味を引き立ててくれるそうです。

2. 茶葉に対するお湯の量
  神戸紅茶さんのティーバッグで言えば、1個に対して150ml。
小さめのカップだと120mlになってしまったりしがちですが、ここを守る事も重要な要素なのだそう。
奥が深いです。

3. 蒸らし時間
  説明書きにある蒸らし時間をしっかり守る事。
  神戸紅茶さんの茶葉の場合だと、ティーバッグなら2分、リーフなら3分。
色づいてくると「もういいのかな?」と思って出してしまいそうになりますが、ここをぐっと我慢。
  しっかり蒸らす事で茶葉のキャラクターが引き立つ味になるのだと教えてくださいました。

どれもすぐに実践できそうなことばかり。
この少しの一手間をかけてポイントをしっかり守れば、ご家庭でもお店のようなおいしい紅茶を楽しめるそうです。

神戸紅茶さんの<ポータルサイト >では、ストレートティーの場合、ミルクティーの場合、など、より詳しい紅茶の淹れ方が公開されていますので、ぜひご覧ください。

【記・撮影 谷口】

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