『人の人生を一番応援できる仕事』ロマンクリエイト代表・戸部さんが思う“ロマンとは”。
FARM CIRCUSにあるイタリアンレストラン「Days Kitchen Pizza&Vegetable」
細部までこだわったお洒落な内観と、心地よい音楽。
そしてなにより、親しみやすいサービスをもって居心地の良い空間を提供しています。
そんなDays Kitchenを運営しているのは、神戸に拠点を構える株式会社ロマンクリエイト。
兵庫、大阪、京都に飲食店を展開し現在7店舗のお店を運営。
イタリアン、カフェ、バルなどその土地に合った業態で、人に愛される素敵な店づくりをされています。
今回は、そんなロマンクリエイトの戸部代表を取材させていただきました。
いつも、どんな時でも笑顔を絶やさず、底抜けの明るさで回りの人を元気にしてしまうような魅力の持ち主です。
ロマン(理想)を本気でクリエイト(実現)する、という言葉に込められた想いを、教えていただいてきました。
【 “飲食業界”の仕事に出会えたことがラッキー。戸部さんと飲食業界との出会い。】
神戸出身の戸部さんは、進学校として知られる神戸灘高校のご出身。大学も名のある学校に進学されました。
しかし進学後は周囲との考え方の違いや目指す理想の違いなどに悩んでおられました。
戸部さんが飲食業界に出会ったのはそんな時でした。
学生時代にはじめた飲食店のアルバイトにインスピレーションを感じ「天職だ!」と思ったのだそうです。
そう思えたことがきっかけで「この世界で生きていこう」と決断し、大学を中退されました。
やがて大手飲食企業に勤められ、責任者にまで駆け上がられました。
こうして飲食業に出会えたことを“ラッキーな事”と戸部さんは言います。
「天職だと思える仕事に出会えた僕はただただラッキーです。夢なんて誰でも出会えるものではないし、
出会えたならそれを叶えようって思う気持ちを、絶対に忘れたらあかんなぁと思っています。」
【「それはロマンやろ」が口癖。“ロマン”という言葉を使う真意とは。】
責任者としてお勤めだった時代、たくさんの部下の方を抱えておられた戸部さん。
みなさんに口癖のように言っていたのは「それはロマンやろ!」という言葉だったそうです。
飲食店のお仕事はある程度流れが決まっていると話す戸部さん。
お客様を迎えて、注文を聞いて、お料理を運んで、お会計をする。
そういう一連の流れの繰り返しという意味では、手と足さえあれば誰でもできる仕事。
戸部さんがロマンを追求しているのは、その“手と足があれば誰でもできる仕事”にいかに価値を見出し、
妥協せずに取り組めるかということ。
例えば、戸部さんが店舗に入っておられたある日の事。
閉店間際でラストオーダーも近く、店内には一組のお客様だけ、という状態になった時の事です。
スタッフの方が閉店に向けて片付けを始められたそうです。
その様子を見て戸部さんは「なんで片付けしてるの?」と問いかけました。
その日はお客様の入りも悪く、“これ以降はお客様が来ない”という判断で片付けを始めたというスタッフ。
でも戸部さんにとっては「お客様が来るか来ないか」が基準ではありませんでした。
ラストオーダーの時間を設定しているという事は、
その時間までは“お客様をお迎えする”という約束をしているということであって、
その約束を破ってはいけないと考えていました。
閉店間際であっても一組でもお客様が居られたら、
そのお客様にとって居心地の良い空間を作るのが自分たちの仕事なんだと。
そこをどこまで本気で考えらえるかを妥協せずに追求し、
価値を見出せるかが“ロマン”なのだと、お話してくださいました。
「しんどいしそこに価値を見出せないとできない事だし、やれって言ってやらされることでもない。でもそれを大切に思えることってすごい大事だなぁと思っていて。僕らがそこに価値を見出すっていうのは、もう“ロマン”でしかないだろって。これが一番の理想だとわかっているなら、それをやりきろうとする信念の強さをもってほしいというのが、ロマンに込める思いです。」
動作で言えば誰でもできる仕事かもしれません。
でも、お客様の居心地の良い空間を提供する為に労力を惜しまないという事は、
決して誰にでもできる事ではありません。
自分が楽したり、業務の効率ばかりを優先していては成り立たない大変なお仕事です。
そこに生まれる苦労を厭わない方や、価値を見出しておられるからこそ
プロと言えるのだろうと考えさせられました。
【経営判断の軸は“人”。従業員の方に慕われるのは、戸部さんが人を大切にしているから。】
取材中たくさんお話を聞かせていただく中で強く感じたことがありました。
それは“人をとても大切にしている”という事です。
スタッフの方々とやりとりしている姿を見ても、厚い信頼を得ている様子がわかりました。
戸部さんにとって飲食店というのはある意味「学校」のような感覚なのだそうです。
学校で色んな経験や体験を経て学んでいくように、社員の方でもアルバイトの方でも、
ロマンクリエイトに勤める中で学んでいき、人生を豊かにする何かを得て欲しいというのが戸部さんの願い。
“場面場面で挑戦させてもらった事で成長できた”という思いを持たれており、
だからこそスタッフのみなさんにも挑戦できるフィールドを作る事が
自分の大切な役割なのだと、話されていました。
ロマンクリエイトは2011年の8月に設立されました。
現在は関西を中心に7店舗運営しておられますが、苦しい事も多々ありました。
それでもいつも守ってきたのは従業員の方でした。
例えば2年前、京都に初出店された時の事。
やっとの思いで長年出店したいと思っていた京都にオープンするも、直後にコロナの脅威に襲われました。
オープンして数か月後には閉店を余儀なくされてしまったそうです。
それでも、新店の為に雇った従業員の方々が路頭に迷う事の無いように、
同じく京都内に2店舗オープンさせることで働き口を作り出したそうです。
会社の利益の為でも、ましてご自身がお金持ちになる為でなく、従業員の皆さんの為に新店を創る。
その行動力には、ただただ頭が下がる思いでした。
「経営判断の軸は人です」ときっぱりと言い切った言葉に、従業員の方々に対する愛情や熱量を感じました。
【ロマンクリエイトが目指すのは、飲食店という地域のパワースポット】
ロマンクリエイトが店舗創りでとても大切にしている事の一つに、
「地域一番のパワースポットを創り続ける事」というのがあります。
戸部さんは飲食店を“在るだけで意味のある場所”だと考えておられます。
スタッフが働けて取引先に仕入れ代としてお金を払う事ができて、
大家さんにも家賃が払えて、さらにはお客様をハッピーにできる。
どれだけお客様をハッピーにできるかは自分の努力にかかっているけれど、
飲食店という場所を通してお客様をハッピーにする機会を得られる。
そんな場所だからこそ、お客様もスタッフも来るだけで元気になれるようなパワースポットとして
店舗を育てていく事を戸部さんは目指しておられます。
お客様に「このお店があってよかった」と思っていただける、
そんなお店で有り続けたいというのが戸部さんの目指す飲食店の姿です。
その想いはお店の内装にも反映されています。
ロマンクリエイトの店舗はどこもキッチンが見える造りになっています。
「お客様から頂くビール代400円で僕らの生活が成り立ってる、ご飯を食べさせてもらっているっていう感謝は絶対忘れたらあかんと思っています。だから、お客様の顔が見えない現場のスタッフが居るっていうのは違うなぁって思うので、コミュニケーションを取れるようにしています。」
【不調な時は、一日一改善。理想の店舗で有り続ける為に大切にしている事は。】
もしも調子の悪い店舗が出た時に、戸部さんが社員の方に伝えるのは“一日一改善”。
例えば小物の配置を変えるなどの些細な事でもいいから、
お客様の居心地の良さに繋がる事を一日に一つでも変えるように伝えるそうです。
すると、一か月で30個も改善されている事になります。
スタッフが4人なら120個も改善されています。
そうした努力を怠らなければいつか必ずまた回復する!、というのが“一日一改善”に込められた思いです。
「変わらなければ僕らは絶対継続できません。こだわりを捨てて、いかに柔軟に変わっていけるかというのが僕らの商売の一番大事なところじゃないかなって思っています。さっき言ったように、飲食店はあるだけで価値があると思っていて、長く在り続ける事っていうのが僕らの使命だと思っています。」
【飲食店の価値を再考。苦しくても、ポジティブに笑顔で乗り切る強さ】
2年前、新型コロナウイルスが国内で蔓延し始めた事で、誰もが大きな影響を受けました。
飲食業界も大きく打撃を受けた業界の一つです。
ロマンクリエイトも例外なく窮地に立たされたそうです。
それでもルールとマナーを守りながらできる限りの手を尽くして、苦難を乗り越えてこられました。
しかしこうしたピンチに立ったことで、飲食店の在り方を再度考えるきっかけになったと、戸部さんは言います。
「僕らの仕事って、お客様から“ありがとう”と言っていただける事、お客様とのコミュニケーションが一番の栄養です。だからそれが無くなった事が一番つらかったですね。スタッフがいてお店があるのに営業できない、お客様が来たくても来れないという状況がつらかった。」
「コロナが出てきたことで、飲食店の在り方を問われてるなぁって思います。もう一回原点に戻って飲食店の価値を認識し、飲食店というパワースポットであることの意義をもっと高めたいですね。こんな時代だからこそ“飲食店があってよかった!“って思ってもらえるような店創りをしたいと、改めて考えました。」
コロナウイルスの影響で戸部さんも精神的に苦しくなった時があったそうです。
それでも、従業員の方がつらくならないようにポジティブな思考で笑顔で接していたと言います。
その強さと人を思う心が、経営者として、人としての魅力が溢れている秘密なのかもしれません。
【人の人生を一番応援できる“外食産業”の仕事】
戸部さんが目指しているのは、外食産業の地位を高められる会社になる事。
飲食業・外食産業を通して、関わる全ての人が幸せになっていく、そんな輪を広げていく。
そうする事によって飲食業界で働きたいと思う人が増えたら、という願いがあります。
「僕は、外食産業の地位が高まれば、日本はちょっと変わるんじゃないかなって思っています。元気になるんじゃないか?って。笑
この仕事ってすごく素晴らしい仕事だと思うんです。でもあんまりイメージの良くない仕事だったりもする。だからこの先、憧れられる職業になればいいなって。僕は『一番の応援者は自分であるべき』だと思っていて、僕らがそれに対して生き方のご提案ができればいいなと思っています。」
そんなロマンクリエイトが掲げる想いは、公式サイトでも熱く語られています。
「企業理念」と聞くとどこか堅苦しくて分かりづらいイメージがありますが、
とても分かりやすく素直な言葉で記されたそれらは、戸部さんの言葉同様にすんなりと心に入ってきます。
これからも新たな展開を考えられているロマンクリエイト。
あたたかな輪が広がっていくこと、素敵なお店や商品を届けてくださることがこれからも楽しみです。
【記・撮影 谷口】