池本さんが受け継ぐ地苺

池本さんが受け継ぐ地苺

神戸は意外と知られていない果物の産地。特に神戸市北区では多くの苺が採れます。
FARM CIRCUSのある神戸市北区大沢町で、苺の栽培を中心に農業を営む池本さんご夫婦を訪ねました。

池本農園

池本農園

どの苺が食べ頃か楽しそうに厳選して、おいしい苺を食べさせてくれた池本さんご夫妻

池本農園を訪れた3月は、ちょうど苺の全盛期。
ハウスの中には、章姫、やよいひめ、紅ほっぺ、紅クイーン、甘クイーン、宝交早生、
そして神戸ルージュ(神戸一号)の7種類の苺が真っ赤に熟し、その甘い香りが広がっていました。

朝は7時にはハウスに入り、数時間かけて苺の調子をみながら歩いて回り選別作業を行う池本さん。
葉っぱに艶があるかどうか、新芽が顔をだしているかどうかで
苺が健康な状態であるかをチェックします。
それから、葉っぱから露がじわっとにじみ出ていることも元気の証なのだそう。
これは、溢液現象(いつえきげんしょう)といって、
葉っぱが朝露に濡れているわけではなく、植物そのものが内部から水を生み出す現象。
この露をまとった美しい苺の葉を見ることがとても好きだと話してくれた池本さん。
苺への愛情をひしひしと感じます。

池本農園

そんな池本さんが育てる7種類の苺のひとつ、「神戸ルージュ」は、
約40年前に神戸に生まれた地苺。
神戸の地苺といえば、二郎いちごが多く出回っていますが、
それと比べて神戸ルージュは、露地栽培向けの品種で栽培が難しいことから、
なかなか出回ることはなく、栽培する農家が減り続け、
わずか7株が保管されているだけの状態になっていました。

何か地元のためにできることはないか、と考えた池本さんが、
今から約7年前に貴重な7株のうちの3株を譲り受け、栽培することを決意。
はじめは、失敗して品種を絶やしてしまわないか、
成長してもおいしい苺が実らないのではないかと冷や冷やしながらの栽培だったそうです。

池本農園

もともとは露地栽培で育てられていた神戸ルージュを
安定して育てられるようにハウスでの栽培に挑戦しました。
肥料をやりすぎると枯れてしまうためぎりぎりの調整を行い、
試行錯誤の結果、やっと完成した神戸ルージュは、
昔ながらの苺らしい、甘すぎず酸味が少し強い味わいで、肉質はやや硬め。
ほうばると、中が白っぽい苺が多いですが、神戸ルージュは鮮やかな赤。
池本さんも、大満足の苺が完成しました。

池本農園

池本農園

今では、池本さんのところから苗を譲り受け、神戸ルージュを栽培する若手の農家もいます。
地元で愛されてきた品種を守りながら、受け継いでいく。
池本さんは、今日もおいしい苺作りに励んでいます。

池本農園

取材日:2017年3月16日 取材場所:神戸市北区大沢町 池本農園 取材・執筆:濱部 玲美 写真:福原 悟史

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