創業から変わらない食材や味へのこだわり ~平山食品~
創業昭和32年、王子公園近くの高架下で
こだわりのソースを作り続ける「平山食品」さんをご紹介します。
卸業から製造業へ
看板のある小さな構えの入り口からは、
深みのあるソースのいい匂いが立ち込めていました。
今回取材をさせていただくのが、平山食品の平山普康さん。
先代のお父様が阪神淡路大震災で体調を崩され辞めようとされた時に
幼少の頃から見続けてきた父の姿に自然と惹かれ、
当時の勤め先を退職されてこちらを引き継ぎ今に至るそうです。
その平山さんが手にしているのが、人気商品「プリンセスソース」。
神戸にお住まいの方は、一度は見かけたことがあるのではないでしょうか。
父でもあり創業者でもある平山久夫さんが、元々はしょうゆやソースの卸業をされており、
「自分で作った方が良いものができる」とご自身で製造を始められました。
当時はお好み焼き屋さんも特にソースのこだわりがなかった時代で、
そんなお店にこだわりの自家製ソースを販売したところ注文が相次いだそうです。
商品は、「とんかつソース」「ウスターソース」「どろソース」の3種類となり、
当初から変わりなく続くラインナップ。
プリンセスソースの誕生
常連さんが直接お店に購入にも来られるこちらのソースは、
「子供が好きだから」とか「小さな頃からこの味で育っている。」と、
根強いファンが多くおられるそうです。
そんなお客様から「今回の出来は少し味が違うね」と指摘もいただくそうで、
それくらいプリンセスソースの味をお客様に知っていただけていることも感じ取れました。
プリンセスソースの特徴は、にんにくと玉ねぎをメインに野菜をたっぷり使っていること。
販売当初より「食欲がそそる」と声をいただき、にんにくブームなどもあり評判になったそうです。
ちなみに気になる「プリンセスソース」の名前の由来を伺うと、
元々は「プリンスソース」という名称を考えていたそうですが
すでにその商品が関東の方で登録されていたため「プリンセス」と付けたそうです。
商品づくりのこだわり
工場内の大きな釜で作るソースは一度にはたくさん作れず、
1回で400ℓ程となり、一升瓶で約200本くらいの生産数となります。
製造工程に機械などは使用せず、こちらの釜でじっくり煮込んでソースを作り、
充填やラベル貼りなども全て手作業だそうです。
取材時も途中で何度も釜を混ぜる作業をされており、
今朝8時より煮込みはじめ、今が最終工程のコンスターチを入れて
とろみを付けているところでした。
ここから沸騰してさらに30〜40分は混ぜておかないといけないとのことで、
まさに手作りソースであることを真横で拝見させていただきました。
先代からの味の継承
お父様でもある先代の味を維持するのが大変と話される平山さんですが、
お客様が食べられて感じた味を率直に指摘くださることも多いとのこと。
それを聞いてその味に寄せようと色々な事を試みるそうですが、
結局は元の味に戻り「最初の味が全ての時代にあう商品に仕上がっている」と、
あらためて先代のこだわりを知り、継続することを大切に取り組まれているそうです。
ひとつの商品ができるまで4〜5日の日数がかかるそうですが、
季節の違いなどで味に違いができてしまうこともあり、釜ごと廃棄することもあるそうです。
手作りで製造する商品だからこそこだわれる部分と、
手間暇かかる部分があることをあらためて知ることができました。
これからのソースづくり
コロナ禍によりお店などからの注文も減り売り上げに影響もあると話される平山さんですが、
自宅需要も増え直接工場に買いに来られるお客様が増えたそうです。
取材中も買いに来られた若い男性もおられました。
販路は他にも、酒屋さんにも卸されそちらからオンラインでの販売もされているそうです。
ファームサーカスで購入されたお客様が来られることもあるそうで、
遠方からわざわざ買いに来られるのがとても嬉しいと話されてました。
「昔から物事や考えをあまり変えずに来た。だから維持していくことを大切に
今の規模感で続けていく事を大切にしている。」とのこと。
これからもクラフト感を維持してこだわりの味を
出来るだけ長く継続していきたいと話される平山さんですが、
「いつかはもうひとつ無添加でオリジナルソースを作りたい。」と
今後の構想を語っていただけました。
もちろんその時にも、いつもプリンセスソースを買いに来られ、
様々な評価をいただけるファンの皆さんの声に耳を傾けて作られるのだろうと
釜を混ぜる平山さんの姿からそんな想いを感じることができました。
【記・撮影 谷口】