「いつもそばにある美味しさ」先人より受け継ぐ伝統の味 ~池本醤油合名会社~

「いつもそばにある美味しさ」先人より受け継ぐ伝統の味 ~池本醤油合名会社~

創業明治18年、神戸で唯一の醤油蔵、
神戸市西区櫨谷町にある「池本醤油合名会社」さんをご紹介します。
 
 

伝統の味を明治から受け継ぐ6代目社長

気さくな感じでお出迎えしてくださった池本醤油合名会社の池本社長。
明治から令和にかけて受け継がれている伝統の味を守り続ける6代目。

明治18年に創業した池本醤油は、もともと川沿いにあった蔵が
大雨で蔵ごと桶も流されてしまい醤油がダメになったこともあり、
安全な場所にということで今の場所に移転したそう。

学業を終え5年ほど別の会社で仕事に就き、それから跡取りとして戻った池本社長。

商売としてはとても難しく「絶対いるけどたくさんはいらない」醤油に対し、
これまで苦労して続けてきた先代の想いを絶やさないように取り組まれている様子を
お話の内容や身振りからも感じることができました。


 
 

生産者の満足ではなく、お客様の満足を追求し続ける

作ることに対してのこだわりは「先代からの独特な味を守っていくこと。」

しかし、時代のニーズにあった商品作りが大切であり、
「生産者の満足ではなく、お客様の満足を追求しないと商いとしては続かない!」と、
歴史ある醤油を守るためにも、大切にする部分と改革をしていかないといけない部分を
見極めようとする池本社長のこだわりや信念が伝わってきました。

「戦前まで醤油屋がとても儲かった商売だったのは、
調味料自体が味噌や塩と醤油くらいしかなく、流通も現代の様に整っていなかったから。」と説明の後、
「今は需要もどんどん減り醤油の加工品が増え、「万能醤油」が喜ばれる時代。」と、
厳しい市場の状況も冷静に認識をされていました。

その上で、
「明治時代や大正時代の味はわからないが、時代ごとに味は変わっているはず。
もちろん時代とともに味は確実に美味しくなっている。」と、
商品自体の進化も明確な根拠を持って説明いただきました。

「これまで原材料となる大豆と小麦の旨味を全て絞り出せなかったのが、
熟成させるための温度管理なども含め「機械化」という技術革新により
ロスも少ない一定の品質を保てるようになった。」

伝統ある味を守ることをただ同じ商品を作り続けるだけではなく、
技術や設備の進化による恩恵をしっかり受け入れながら、
まだまだ可能性のある味の追求をされている姿勢に
職人家系が永続できる理由に触れることができました。

数々の醤油を作り出してきた歴史ある工場

池本醤油の醤油作りは、「混合(こんごう)」と呼ばれる製法。
大手は「本醸造(ほんじょうぞう)」という大豆と小麦粉を塩水に入れて絞り出す作り方となり、
「混合」は絞り出した醤油に大豆から抽出した旨味成分の「アミノ酸」を足す製法。
旨味と香りが抜群で、九州や北陸など地方で多く行われている。

商品はひとつひとつを人が手作業で瓶詰めしてステッカーを貼り封をする。
大量生産のオーダーが入った際は、現在8名の従業員総出で対応しているそうです。

「やってみよう」「やってみないとわからない」とチャレンジし続ける社風

池本醤油の商品は、少し「たまり風」にした
何にでもかけていただける濃口商品をベースとした「かけ醤油」や、
大阪のあるポン酢を食べてみたところ美味しいが少し酸味がきつかったため、
上品過ぎる「すだち」ではなく「柚子」を加え
試行錯誤の結果出来上がった「しょうゆ屋さんのぽん酢」、
そして地元産の大豆と小麦を使用した原材料にこだわった無添加の「むらさき」など、
それぞれに商品としてのこだわりやアイデアが詰め込まれています。

お客様のニーズを伝えて独自の商品を開発して頂いた「たまごかけごはんのしょうゆ」や、
パーク内BBQテラスでも人気の「焼肉のたれ」は、ここでしか買えない魅力的な商品です。

商品のラベルを学生のデザインで採用したり、
従業員のアイデアや意見を吸い上げて「やってみよう!」とチャレンジする社風や、
「やってみないとわからない」と様々な事を試しながらお客様の反応を参考に商品化している。

難しい依頼に楽しみながら向き合い、「小さな蔵だからこそできる小回りのきく商品開発や、
小ロットで何かを作る事を得意としている会社」と自信を持って商品作りに臨まれている姿は、
まだまだ神戸唯一の醤油蔵としての責任を果たしていける少数精鋭の企業魂を感じることができました。
 
 

「お金にはならないが開発は楽しい。」6代目社長の考えるこれから

味にはこだわり、大量生産はしない、小回りのきくスタイルが得意、と
歴史ある醤油蔵の職人的な一面と、ビジネスとしてアンテナを貼り続ける池本社長。

今後取り組みたい事を伺うと、
「現在は仕込みから行っている醤油作りを、少量でも「イチ」から作りたい。
地元櫨谷町の大豆と小麦を使って5年以内には取り組む。」と、
具体的なイメージをワクワクした表情でお話いただきました。

「流行りはすぐ廃れる。ロングセラーの商品を作りたい。」
「お金にはならないが開発は楽しい。」

わからないことはすぐに聞いて、知らないフリしてでも吸収しようとするスタイルは、
まだまだお客様の食卓を豊かにする日本古来の調味料の可能性を楽しまれている様に見え、
「いつもそばにある美味しさ」の深さに触れる貴重な時間になりました。

池本醤油合名会社
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池本醤油合名会社オンラインショップ

【記・撮影 谷口】

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