「絶対作ったるねん!」尽きることのない探究心と好奇心。
大沢町の隣にある、淡河(おうご)町。
FARM CIRCUSには、淡河町の農家さんもたくさん野菜を持ってきてくれています。
今日はその農家さんの一人、西浦さんをご紹介します。
(これまでのコラムはこちら。)
やんちゃなクラスメイトみたいな農家さん
「農家さんぽくないなぁ」
それが、西浦さんに初めてお会いした時の第一印象でした。
ジョークのきいた語り口に、豪快な笑い声、ダイナミックなしぐさ。やんちゃなクラスメイトのようで、穏やかな農家さんのイメージに比べると、どこか雰囲気の違う方でした。
西浦さんはもともと、都会で接客業をしていたそうです。一見関係のない職業のように思えますが、西浦さんの野菜作りには、これまでのお仕事でつちかってこられた経験やスタイルがそのまま活きていました。
「野菜の声をきく」一瞬の表情を見逃さない野菜作り
西浦さんが農業で一番大切にしている事は「野菜の声をきく」ということ。
今回の取材で、最初に聞かせてくれた事でした。照れ隠しのように冗談ぽく言ってるものの、野菜に向けられた目を見ると、真剣なのだとすぐにわかります。
「やばいなって思う瞬間にやれへんから、多分アカンのやと思うねん。やっぱり見てたら気付くよね。人の変化もね。」
一瞬の表情の変化も見逃さない事が、大切なのだそうです。
そう言い切れるのはきっと、接客業でたくさんの人の表情と感情に接してこられたからこそ。
野菜にとって一番大切な土づくり、水や肥料をあげるタイミング。西浦さんの野菜作りは、すべて野菜との対話で成り立ちます。
トマトのビニールハウスにて。
まず最初に案内してくれたのは、トマトのビニールハウス。
西浦さんは中を進んでトマトをもぎとると「これとかめっちゃうまいと思うで。多分びびると思うで!」と、嬉しそうにトマトを渡してくれました。そのストレートな表現に、野菜を真剣に見続け育てられている愛情を感じました。
いただいたトマトを試食すると、おいしい!口いっぱいに広がるトマトの爽やかな甘酸っぱさと、しっかりした果肉の食感がたまりません。あっという間に一個食べきってしまいました。振り返ると、西浦さんもおいしそうに食べていました。
決めたら意地でもやる。ストイックな挑戦家。
次に案内してくれたのは、イチゴのハウス。中は広々していて、2段にわけて育てられています。ここでは、1月のプレオープンを皮切りに、春までイチゴ狩りが楽しめるそうです。
その隣のビニールハウスでは、キャベツとブロッコリーが育てられていました。
あれ?と思った方もいるかもしれません。というのも、キャベツは露地栽培が一般的で、ハウスで育てるのは異質なのだそう。
それでもハウスで育てているのはどうしてなのでしょう。
今年の夏は台風が多く、最初に植えたものはほとんどダメになったそうです。
でも初めて挑戦したキャベツ。「絶対作ったるねん!」そんな思いからハウスで育てたところ、、見てください!
この立派なキャベツ!
収穫にはまだ早いそうですが、順調においしそうなキャベツが育っていました。
例えうまくいかなくても、やり方が異質でも、やると決めたらやる。このストイックさに、私たちの食卓は守られています。
西浦さんは約2年前から農業を始めてから、いろんな野菜に挑戦してこられました。
トマトやキャベツ以外にも、ピーマンにナス、キュウリ、インゲン豆、スイカ、とうもろこし、、枚挙にいとまがありません。
今年は地元の特産物、ちぢみほうれん草にも挑戦しています。
もともと農家ではなかった西浦さんは、色んな畑を見て、吸収していくのだそうです。
その探究心は尽きることがなく、キャベツ日本一の軽井沢など遠方にも足を向け、その土地の特産物の畑に直接行って吸収し、帰ってきたら挑戦。
”一番できる人に聞け”。というのが、接客業時代から変わらない、西浦さんのスタイル。
「できることはやろうと思てる。でもそうしていられるのはこいつ(パートナー)のおかげ。」
取材の最後、仕事のパートナーの方が黄金焼のお店を構える、道の駅淡河(おうご)へお邪魔しました。
そこで垣間見たのは、地元のお母さんにも頼りにされている頼もしく、優しい姿。そしてパートナーに感謝を伝えるストレートさ。
「(お客さんからの希望があれば)できることはやろうと思てる。でもそうしていられるのはこいつのおかげ。こいつがこうやっていろんなことやってくれるから、こうしてフットワーク軽くやりたいことができる」と西浦さん。
西浦さんは今の生活をすごく楽しんでおられました。
「やる時はめちゃくちゃやるし、せえへん時はせえへん。」と、効率よくメリハリのある農業を心がけている事も、楽しそうに話してくださいました。
実際、農業を始めてから、より楽しそう、と言われるようになったそうです。そんな西浦さんの野菜。もうすぐ出てくるキャベツも、その先どんな野菜が出てくるのかも、今からとても楽しみです。
【記・撮影 太田萌子】