手間と愛情の分だけおいしくなる、大きくて甘い平山さんのイチゴ。
FARM CIRCUS MARKETにもおいしいイチゴを出荷してくださっている、イチゴ農家の平山さん。
神戸市北区の八多町(はたちょう)で、お姉さんと二人で協力しながらイチゴを育てておられます。
平山さんのイチゴは大きくて、とっても甘くて、食べる人を幸せな気持ちにしてくれます。
「昔はなんでもやったで」寝る間なし、休みなしで働いてきた。
平山さんが嫁いだ先は、農業を営むお家でした。二十歳の頃に嫁いでから、旦那さんと一緒に色んな野菜を育ててきたと言います。パセリにホウレン草、青ネギ、水菜、お米。時には山に柿や栗を採りに行ったり、桃を育てていただ事もあるそうです。なんと乳牛のお世話をしていた事もあるんだとか。
その経験もあって、今でもイチゴの他に、ご自宅用にお野菜も数種類育てています。畑を見せてもらいましたが、どのお野菜もいきいきしているのが分かります。
それだけたくさんの事をこなすのは、並大抵の事ではありませんでした。夜中に神戸の市場にいって出荷して、帰ってきてからも朝早くに起きて農業。本当に”寝る間もなく”働いていたそうです。
「昔は働いて、働いてなぁ。これが仕事やからな。なんでもせんならんねん。」
でも、そう語る平山さんのお顔は穏やかで、これまでの苦労を感じさせませんでした。
手間の分だけ、愛情の分だけ、大きくて甘い。
たくさんのお野菜を育ててきた平山さんがイチゴの栽培を始めたのは、いまからおよそ26年前。最初は、露地栽培から始まりました。露地で育ったイチゴはとてもすっぱかったんだそうです。途中でハウス栽培を始めてからは、甘いイチゴができ始め、量もたくさんとれるようになりました。
とはいえうまくいかない事も多く、品質が安定するまでは苦労の連続でした。旦那さんが早くに先立たれてしまったりもしました。それでも、決してやめることなくお姉さんと一緒にイチゴを作り続けました。「(先立たれて)それからもずーっと頑張ってつくっとんねん。ようでけたもんやな。」と笑う平山さん。
今では大ベテラン。パック詰めで重さを量るのも、計量機いらずです。ちょっとオーバーする事もあるけど、それは「おまけや」とのこと。
平山さんとお姉さんは多い時でハウス4棟分、株数にして8000株ものイチゴを栽培しています。
イチゴの栽培には、本当にたくさんの手間がかかります。今でもそんな大変な工程をたったお二人でこなしておられます。
夜にビニールハウスの組み立て、土づくりをして、イチゴの苗に割りばしで支柱を立てて、1年を通してたくさんの手間がかかっています。お二人のイチゴ作りは、その全てが手作業。私たちの手元に届けられる大きくて甘いイチゴは、この苦労があって、作り上げられています。
お姉さんはハウスに行くと「いちごさんおはようさん、おいしくなってよー。ようお世話するから、大きなってよー。」と、声をかけながら歩くそうです。そうして愛情をたっぷり受けて育った平井さんのイチゴは、どれもふっくらと丸くて、つやつやしていました。
平山さんのイチゴが大きくて甘いもうひとつの理由
お二人とお話をしていると、とっても温かい気持ちになります。幼いころ優しく見守ってくれた祖母や、隣近所おばあちゃんとお話した時のような、懐かしくて、ホッとする感覚。取材中「食べな退屈やろ」とコーヒーやイチゴをくださったり、平山さんのイチゴを取りに来られたご近所の方と自然と会話が始まったり。お二人の周りにはずっと、ほのぼのしたあたたかい時間が流れていました。
この優しくて穏やかなお人柄がきっとイチゴに表れていて、それが平山さんのイチゴが大きくて甘い、もう一つの理由。
「イチゴと仲良し。」
取材中、一番印象に残ったのは「(イチゴは)一年中さわっとかんならんねん。イチゴと仲良し。」とにっこりほほ笑む平井さん。かわいらしいその笑顔には、愛情があふれ出ていました。
そんなお二人のイチゴが味わえるのは、残念ながら今年で最後。
今シーズンで販売用のイチゴの栽培を終えられるそうです。80歳を超えているとは思えないほどしゃんとしておられるお二人ですが、イチゴの栽培は引退して、これからは近所の農家さんのお手伝いを中心にしていかれるそうです。こんなベテラン農家さんがお手伝いしてくださったら、心強いですよね。
おいしいイチゴが店頭からなくなってしまうのは寂しいですが、これからもお二人で、あたたかい時間を過ごしていかれる事を願います。
【記・撮影 太田萌子】