新時代の酒造りとおススメの味わい方。神戸酒心館。
日本一の酒どころとして名高い灘五郷。その一つ御影郷で日本酒「福寿」を造る神戸酒心館。FARM CIRCUSとしては2018年以来、約6年ぶりにお話を聞かせていただきました。この6年の間に、コロナ禍、酒米生産地の環境変化、そして海外需要など、状況は大きく変わってきました。変化を厭わず、伝統を守りながら新しい挑戦を続ける姿、そしてお酒を美味しく楽しむポイントを教えていただきました。
※2018年当時の記事はこちらから。
「日本酒業界も、大きな変化の波の中にいます。コロナ禍もありましたが、そもそも国内市場は下がり続けていて、昭和48年をピークに3分の1ぐらいまで生産量が減っています。また若い方が日本酒自体を飲まなくなっているというデータもあります。そうした中で、私たちが何に価値を見出すのか、なぜお酒をつくるのかということについて、改めて見直した時期でもありました。」
今回は、株式会社神戸酒心館広報部の幸徳部長にお話を伺います。日本酒業界は、こうした厳しい市場環境もありつつ、兆しもあります。日本酒の海外市場は右肩上がりとなっており、2022年度は過去最高の輸出額とも言われているそうです。また神戸酒心館へ見学に訪れる方も、多い時では半分程度が外国人の日もあるくらい、海外での日本酒への注目が高まっています。
そうした中、神戸酒心館が定めた価値とは。
「2030年に向け、「グリーン・イニシアティブ」という酒造りの目標を掲げました。環境に負荷をかけないで美味しい日本酒を造るということです。例えば海外を見据えた時に、ワイン市場では、その地域独自の自然環境を尊重し、それに適した食物を育てる、”テロワール”という価値がすごく大事にされています。そして、日本でも、最近では地球温暖化による高温やゲリラ豪雨など、環境面において多くの課題を抱えています。そうした背景の中で、私たちは、どうやって環境に配慮しているかということを説明できる酒蔵でありたいと考えました。」
神戸酒心館では、新しい取り組みを次々と始めています。お酒の原料となる酒米づくりにおいて、FARM CIRCUSのある北区大沢町の農家と共に、ドローンを飛ばして生育状況を分析し、省力化を図るための生育調査や、神戸市の東灘区にある下水処理場で抽出される再生リンを肥料とした「こうべハーベスト」で酒米づくりを行い、ICT農業の推進と循環型の酒造りから生まれた「福寿 純米吟醸 山田錦 環和-KANNA-」。また、但馬のコウノトリの野生復帰に必要な多様な生き物を育む環境づくりのため、無農薬で栽培されたコシヒカリを用いた「福寿 特別純米原酒 無農薬コウノトリ」や、日本酒を造る工程において、世界で初めてカーボンゼロ(二酸化炭素の排出量が実質0)を達成した「福寿 純米酒 エコゼロ」なども発売しました。神戸酒心館のみなさんが一丸となって、様々な関係者と共に新しい酒造りのあり方を模索されています。
「環境変化により、品質の良い酒米が大量に長期的、そして安定的に取れなくなる可能性もある中で、脱炭素社会、循環経済社会、自然共生社会を目指した様々な取り組みを考えています。
例えば、コシヒカリなど、食べて美味しいお米は、でんぷん質以外にタンパク質や脂質がたくさん含まれています。そうしたお米でつくったお酒は辛口で飲みごたえのあるしっかりした味わいです。以前、イベントで会席料理と数種類の日本酒を合わせた時に、コシヒカリを用いた「無農薬コウノトリが一番良かった」という声が多かったこともありました。こういったお酒を造り、皆様に美味しく呑んでいただけることで自然共生社会の実現を目指しています。
環境に配慮をした酒造りだけではなく、長年の酒造りの経験を生かして美味しい日本酒を造るのは神戸酒心館らしさが出ていると思います。
FARM CIRCUSでは、神戸酒心館から唯一許可をいただいた場所(!)として、生酒の販売もしています。
「日本酒は、常温で保管できるように、火入れという約60度で殺菌する工程を加えて常温でも品質が落ちないようにしています。刺身と焼き魚のように、熱を加えると味わいは変わりますよね。日本酒も同じように熱を加えると味わいが変わります。どちらも甲乙つけがたい味わいですが、生酒は、熱を加えない、お酒を搾ったばかりのフレッシュな状態でお届けできます。生酒はお酒の本来の味わいを楽しめますので、ぜひその味わいを楽しんでほしいですね。
生酒、ぜひ試してみてくださいね。続いて、寒い季節のお酒の楽しみ方はありますか?
「温度を変えてみるのはいかがでしょうか。冷酒の状態で飲むときりっとして酸味のある味わいとなりますが、温度が上がってくると酸味が和らいで、お米の旨みが感じられます。そこでおススメなのは、燗酒(かんざけ)です。お酒の種類によっても変わりますが、約40度程度に温めていただいて、料理と一緒に飲んでみると、口の中でお米の風味が広がり、日本酒が調味料のようにお米の豊かな旨味が広がります。料理に冷酒が定番ですが、温かい料理には温かい燗酒で合わしていただくと料理の温度と燗酒の温度が調和するのでおすすめです。冬の温かい料理には燗酒もぜひ。」
料理酒は旨味を出すためにも使われると言いますが、飲むお酒にもさらに旨味を加えてもらうということですね。お鍋をはじめ、冬の料理が一層美味しく感じられそうです。
FARM CIRCUSには、地のものがたくさん揃っています。野菜とお酒の組み合わせでおススメはありますか?
「例えば(※)大吟醸は香りが華やかなので、セロリなどの香草系やグリーンサラダとよく合うのではないでしょうか。旨味が少なくて口当たりは甘みがあるので、酸味のあるドレッシングを加えるとすごく合いますね。そして(※)純米酒の生酒については、旨味のある味わいのお酒ですので、肉系のものに合わせていただくといいですね。」
※大吟醸・純米酒:日本酒は、精米(米の表層部を削ること)をする過程で、残ったお米の割合で呼び方が変わります。大吟醸は純米酒よりもよりお米を削ったお酒です。一般的には、お米を削るほどに味わいはクリアな口当たりと華やかな香りが際立ちますが、逆に削らない純米酒は辛口で旨味が強いお酒とも言えます。
冬の季節は、北区大沢町のちぢみほうれん草や北神ネギなどが店舗に並びます。ぜひ神戸酒心館の生酒と一緒に地元の野菜も楽しんでみてはいかがでしょうか。
《さいごに》
ここまで読んで下さったお客様限定で「生酒10%OFF」にて販売いたします。
生酒をお買い上げ時に「コラムを見た」とお伝えくださいませ。
・対象商品:量り売り生酒のみ*通常商品は対象外
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みなさまのお越しを心よりお待ちしております。Fun to eat local🎪
【記 鶴巻耕介 撮影 FARM CIRCUS】