代々受け継がれる二郎いちごは、丹精込めて育てるからこそ続く不動のブランド

代々受け継がれる二郎いちごは、丹精込めて育てるからこそ続く不動のブランド

神戸を代表するいちごのブランド、二郎(にろう)いちご。
シーズンになると、二郎いちごを求めて遠方から買いに行く人もいるほど、ファンの多い人気のブランドです。

『二郎いちご』と聞くと“品種の名前”だと思ってしまいそうですよね。
でも実は、二郎地区で採れたいちごを“二郎いちご”と呼びます。
だから、品種も様々。
つまり質が良い上に好みの品種に出会う事ができる。それが二郎いちごの魅力のひとつです。
 
 

そんな二郎地区でいちごを育てる、いちご農家の温井さん。
FARM CIRCUSがオープンした時から、毎年たくさんのいちごを出してくださっています。
コロナ前はいちご狩りで1日に100人以上ものお客様が来園されることもあったという、
地元でも人気のいちご農家さんです。

温井さんは二郎生まれ二郎育ち。
お家も代々農家をしておられ、温井さんで5代目なのだそう。
二郎にいちごが持ち込まれたのは大正末期だと言われていますので、
二郎でいちご栽培が始まったほとんど初期の段階から、
温井さんのところではいちごが育てられていたのですね。

温井さんがいちご農業を継いだのは、今から約14年前。以前は病院の厨房にお勤めでした。
それまでは、祖父母とご両親の4人でいちご農業をなさっていたそうです。
ところが順番に先立たれてお父様だけになったことで、前職を退職して家業を継ぐことを決められました。
今は奥さまと二人で農業をされています。

 

【人気の品種とめずらしい品種。温井さんが育てる2種類のいちご】

温井さんが育てておられるのは、北区でも人気の品種“章姫”。
スーパーなどではあまり見かけないので、聞きなれない方も多いのではないでしょうか。

章姫は酸味がほとんどないのが何よりの特徴。
甘さの際立つ品種で、お子さまにも人気です。
でも、実がとても柔らかくて傷つきやすいために流通が難しく、
スーパーなどで見かける事が少ないのです。
そういう点では“その土地でしか味わえない品種”とは言え、
二郎や大沢(道の駅の所在地)を代表する品種になっています。

そして温井さんが育てておられるもう一つの品種は“かおり野”。
二郎をはじめ北区ではあまり見かけない品種です。

それもそのはず、かおり野は10年近く前に三重県で開発された品種なのだそうです。
“かおり”という名を冠していることからも分かるように、香りがとても良いのが一番の特徴。
優しい酸味とさっぱりした甘さで、爽やかでみずみずしい味わいです。
「ジューシー」という言葉がぴったりで、香りの良さと相まっていちごの風味を堪能できる品種です。

三重県生まれのかおり野は、育てるためには許諾料が必要なのだそう。
そのため、この辺りではあまり見かける事の無いレアな品種。
“食べてみておいしかったし、お客さんに楽しんでもらいたい”と、こうした珍しい品種も育てておられます。

私も実食させていただきましたが、温井さんのいちごは本当に甘い!
月並みな言葉かもしれませんが、市販のいちごとは比較できない程の甘さで驚いてしまいました。
これがいちご本来の味わいなのかと、感動を隠せませんでした。

「いちご狩りに来た人によく『練乳ないですか?』と聞かれますが、そのまま食べてもらった方がおいしいです」といって温井さんは笑っておられましたが、本当にその通り。
練乳をかけるのは、むしろもったいないとすら思えます。
もし二郎にいちご狩りに行かれる機会があれば、ぜひそのまま召し上がってみてください。
 
 

【こだわりは減農薬。そのワケは、、、】

いちご作りをする上でのこだわりは、農薬を極力使用しないこと。
その理由は『機材が背負うやつなので重くて、、笑』という、とてもシンプルなものでした。
取り繕ったりしない素直なお話に安心感を感じました。

お話を伺っていくと、背負うタイプの農薬散布の機材は本当に重いのです。
温井さんのところでは20ℓのものを使っておられるそうなので、背負う重さは20㎏。
さらに7棟すべてに散布しようとすると、合計360ℓは撒かないといけないそうなのでかなりの重労働です。
その労力を減らしつつ私達消費者も減農薬のいちごが食べられるので、どちらにとっても嬉しい事ですね。
 
 

【実は年間仕事のいちご栽培】

いちごの栽培は、前年の秋頃から始まります。
冬は“親株”になる苗を寒さにあてて休眠させて根を張らせ株を丈夫に育てます。
いちごの収穫シーズンが終了すると、ハウスを一旦整理して“親株”から、子株を増やしていきます。
(ちなみにこの子株、1番目はイチロー株、2番目はジロー株、3番目はサブロー株とも呼ばれるそうです。可愛らしい呼び名ですね。)
いちごが収穫できるようになるのは2番目以降の子株からだそうで、
実を付けて収穫できるようになるまでには冬を乗り越えなければなりません。

神戸市北区は寒暖差の大きい地域。
ですが意外な事に温井さんのハウスをはじめ周辺のいちご農家さんも、
ハウスの中に暖房設備がある所は少ないそう。

でもハウスの構造を工夫する事で、中の温度が下がりすぎる事なく保たれるのだそうです。
温井さんのハウスは、冷気が入り込む下方が二重になっていました。
取材当時は寒いシーズンでしたがハウスの中はとても暖かく、いちごが元気に育っていました。

秋の苗作りにはじまって、初夏に収穫のシーズンを終える。
そう考えると、いちごの栽培は年間を通して行う大変なお仕事です。
そしてそこには様々な工夫と、手間暇がかけられています。
おいしさの裏側には、農家さんの努力がぎっしりと詰まっていたのですね。

現在二郎ではいちごシーズン真っ最中。
FARM CIRCUSでも温井さんのいちごを販売させていただいていますが、
いつも人気で休日には追加で持ってきていただく事もあるほど。

神戸市北区にお越しの際は、練乳をかけずに、ぜひそのまま召し上がってみてください。

【記・撮影 谷口】

Share This Page

Related Post