アットホームであたたかいさつまいも堀り農園、神戸市北区の幸田農園さん
春にはいちご狩り、夏にはとうもろこし狩り、秋にはさつまいも堀りと、
季節ごとに色々な味覚狩りが体験できる神戸市北区。
道の駅の周辺にも、たくさんの農園があります。
観光農園の中でも道の駅から一番近くにあるのは、道の駅から歩いて5分程のさつまいも園、幸田農園さん。
家族みんなで切り盛りしておられる、アットホームなさつまいも農園です。
ファンの方も多く、毎年秋になるととても賑わっています。
幸田農園さんで育てているさつまいもは、『紅はるか』という品種。
「農薬不使用なので、もしもわんちゃんが迷い込んで食べちゃったとしても大丈夫ですよ。」と
笑って幸田さんは話してくださいました。
紅はるかはさつまいもの中でも甘さが段違いの品種。糖度が安納芋と同等か、それ以上になることも。
水分をしっかり残しているので食感はホクホクしていて、焼き芋にするにも大人気の品種です。
秋になると、このおいしい紅はるかを求めて幸田農園さんには多くの人が訪れます。
でもお話を伺ってみると、人気の秘密はさつまいもの美味しさだけではなく他にもあったようです。
親子で切り盛りする農園で伝えたいこと
先述したように、幸田農園さんは親子3名で切り盛りしておられます。
主に幸田さんご夫妻がさつまいもを育てたりさつまいも堀の運営を行い、
娘さんが予約管理やネット管理などをされています。
2年ほど前にHPを開設してからネット予約がすごく増えていったそう。
2年前といえば、ちょうど新型コロナウイルスが日本にも蔓延し始めた頃です。
HPがオープンしたのはその少し前でしたが、コロナ禍でもこのHPのおかげで予約は絶えず、
今年も電話がひっきりなしにかかってきていたそうです。
コロナ禍において観光農園の状況が厳しくなっている中、喜ばしい状況です。
幸田農園さんがさつまいも堀を始められたのは、今から20年以上前のこと。
幸田さんは観光農園を始められる前はJAに勤めておられ、奥さまは幼児教育に携わっておられました。
それぞれの知識やご経験を活かしながら農園を運営しておられます。
そんな幸田さんがさつまいも堀を通じて伝えたい事、かける想いとは。
(奥さまの充代さん。Tシャツは幸田農園オリジナルで、ひそかに私のお気に入りです。)
幸田さんは、小さなお子さまが来られた時には必ずある話をするのだそうです。
「さつまいもって、ひとつの株を取るとたくさん付いてきますよね。お父さんもお母さんも、子供も赤ちゃんも。土の下で家族が繋がっているんです。ひとつの株が、みんなと同じ家族なんです。大切な命。野菜は野菜、人間は人間とわけるのではなくて、人間やみなさんの生活と繋げて、命の大切さを伝えたいと思っています。」
さつまいもをただの野菜として切り離して考えるのではなく、人間と繋げる事で学べることがある、
それを感じてもらえたら嬉しいと仰っていました。
もうひとつ、幸田さんがさつまいも堀りを通じて伝えたい事があります。
それは“世代は繋いでいくもの”だということ。
さつまいもは生命力がとても強いのだそうです。
例えば隅っこに掘り忘れたさつまいもがあるとすると、そこからどんどん広がっていく。
母から子へ、子から孫へ、次へ次へと世代を繋いでいきます。
その様はさながら人間と同じ。
さつまいもが次々と子を繋いでいくように、人間も親の愛情をもって子どもが育ち、
次の世代へ繋がっていきます。
人口が減少している現代において、このように次の世代へと繋がっていくことの大切さを伝えたいのだと、
幸田さんは話してくれました。
さつまいも堀で繋がる絆
さて、ここで幸田農園さんが紹介された動画があるので、ご紹介します。
とっても楽しそうで、みなさん良い笑顔。
動画からも分かるように、さつまいも堀りは小さなお子さまはもちろん、
大人も一緒に楽しめるアクティビティです。
おじいちゃんおばあちゃんにとっても、かつて経験した懐かしい行事。
そうして世代を問わず楽しめるアクティビティだからこそ、家族の繋がりが生まれるのだと、
幸田さんは言います。
「さつまいも堀りが、離れて暮らす家族や親戚が集まる機会になり『こうやって芋ほりするんやで』という会話があり良い雰囲気が生まれたりします。芋ほりを通じて希薄化している家族の繋がりや会話が生まれたりすると思うので、そんな風に使ってもらいたいなぁと思っています。」
土に触れて、自然を感じて、人はいつか地に還る
今の時代は、泥にまみれなくても生きていくことができます。
もともと教育に携わっておられた幸田さんは、そんな風潮を懸念しています
「今は頭脳が発達することに重きをおいた、机の上のお勉強が増えていますよね。泥んこになって遊んだりすることも減っているし、お母さんもそれも要求しない。
でも、人はいつか地に還るもの。だから土に触れる、土を掘る、ショベルを使ったり、芋を掘る時に宝探しのようなわくわく感を感じたり。そんな風に土と親しくするのが人間らしさだと思っていて、それを目指しています。」と話す幸田さん。
今は、家庭菜園でもしない限り土に触れる機会なんてないですよね。むしろ、泥んこになる事に多少の抵抗を感じられる人も多いのではないでしょうか。
でもきっと、土に触れる事や、自然と触れ合うことは、本来あるべき私たちの姿なのかもしれません。
さつまいものように、繋がりを大切に
こうした想いをお客様と共有し、繋がりを大切にしておられるということが、
取材を通じてひしひしと伝わってきました。
それこそが幸田農園さんの人気の秘密なのでしょう。
来てくれた人に満足してもらえるように、一人一人丁寧に大切に接していると話しておられました。
想いを伝える、受け取る人がいる。そこにはコミュニケーションが生まれ、繋がりが強くなる。
当たり前のようで、コミュニケーションが薄くなっている現代ではとても大切なことだと思います。
そんな幸田農園さんには、もちろんファンがたくさんおられます。
そこでこれからファンクラブを作りたいのだと教えてくれました。
ファンの人を招待して栗ご飯やお赤飯を振舞ったり、時にはお餅つきをしたり。
想像するだけでワクワクしますよね。
そして幸田さんも、そんな風に何をすれば喜んでもらえるのかを考えるのがワクワクすると、
声を弾ませて話してくれました。
さつまいも堀りにかける想い、お客様を想う気持ちがあたたかい幸田農園さん。
是非シーズン(毎年9月中旬~11月上旬頃)になったら、さつまいもを掘るだけでなく、
幸田さんに会いに行かれてみてはいかがでしょうか。
【記・撮影 谷口】