『笑顔溢れる食卓に、河昌さんの“須磨のり”』

『笑顔溢れる食卓に、河昌さんの“須磨のり”』

海にも山にも恵まれた、神戸の街。
その中でも海の恵みを感じられるのは、三宮より西側に位置する神戸市須磨区。
須磨浦漁港、須磨浦海岸などと呼ばれ、新鮮な海産物が多く採れるほか、
釣りや海水浴を楽しむ場としても親しまれています。

今日は、その須磨からおいしい“須磨のり”を届けてくださる河昌さんをご紹介。
お話を聞かせてくださったのは社長の藤井さん。
河昌さんは、社長と奥様である女将さん、営業の方が一名と数名のパートさんの少数精鋭で、
地域密着型の運営をしておられます。

河昌さんの須磨のりは、神戸市のふるさと納税の返礼品に選定されていたり、
五つ星ひょうごにも選定されるなど、品質の良さは折り紙付き。
美味しさの秘密は、徹底した“一番摘み”へのこだわりでした。
 

《収穫できるうちのたった3%のおいしさ》

海苔の養殖は網を用いて行われます。
網に海苔の胞子を付着させ、成長させていきます。
ある程度の長さになったら海苔を収穫しますが、
同じ網で10回程度海苔を収穫する事ができます。
 
しかし収穫の回数を重ねるごとに品質は落ちていきます。
風味も柔らかさも落ちていってしまうのだとか。
そこで河昌さんでは、 “一番摘み”の海苔だけを使用しているのだそうです。
 
“一番摘み”とは、文字通り一回目の収穫の事。
「新芽」とも呼ばれる一番摘みの海苔は、柔らかく風味も豊かで、
海苔本来の美味しさを味わう事ができるのだそうです。
 

 
「(海苔の収穫は)最初のうちは短め、短めで摘んでいくんです。
三回目、四回目の収穫となると成長が早くなっているので、
一回の収穫で三倍くらい採れるようになるんですよね。
だから一番摘みというのは、須磨で採れる海苔の3%くらいしかないんです。
それでも、回数を重ねると風味も柔らかさもどんどん落ちてくるので、
一番摘みしか須磨のりって言わないよって気持ちでやってます。」
 
藤井さんは「一番摘み海苔で本当においしいものは、ちょっと穴が開いているんですよ。」と教えてくれました。
海苔を乾燥させる時、柔らかい海苔は縮んで穴が開きやすくなるのだそうです。
それほど柔らかいので、食べた時の口当たりがより良くなるのだとか。
 
ただ、本当においしくても穴が開いているものは贈答用にはできないそうで、
穴あきの海苔は卓上用でしかお目にかかるチャンスが無いようです。
そう思うと、海苔を食べていて小穴が開いていたらラッキーですね。
 

《意外と知られていない、海苔のおいしさの秘密》

 
ところで海苔は、旨味が詰まった食材という事をご存知でしょうか。
旨味成分には色んな種類がありますが、中でもポピュラーな三大旨味成分と言われるものがあります。
昆布などに含まれる“グルタミン酸”、椎茸などに含まれる“グアニル酸”、
そして鰹節などに含まれる“イノシン酸”です。
 
これらの旨味は、同時に使うと相乗効果でさらに旨味が増すと言われていますが、
海苔には三大旨味成分が全て含まれているのです。
自然食品の中でこれら全てが含まれている食材は、唯一海苔だけなのだそうです。
 
さらに須磨の海苔は、専門機関の調査結果から他の海苔に比べて栄養価が高い事も分かっています。
旨味が詰まっていて、栄養価が高い海苔。
さらにその一番おいしいところだけを使って作られたのが、河昌さんの須磨のり、というわけなのです。
 

《回転寿司の普及で大ピンチ》

 
河昌さんは、今から50年前の昭和46年に、先代であるお父様が創業されました。
創業時は海苔の卸業を生業としておられ、お客様はほとんどがお寿司屋だったそうです。
 
ところがある時期から、河昌さんをはじめ海苔屋さんに転機が訪れます。回転寿司の急激な普及です。
藤井さんはよく勉強会などに行っておられたそうで、その中で、
この先10年の間に寿司の売上の9割は回転寿司になると言われたそうです。
売上の9割がお寿司屋だった河昌さんにとっては、不安になる言葉でした。
「この先、売上が1/10になってしまうんかと、ドキッとしましたね」と、当時の心境を教えてくれました。
 

 
そうならない為にも藤井さんは販路を見直し、小売に注力するようになったのだそうです。
「地元にもおいしい海苔があるのだから、“須磨のり”としてしまおう」と、
須磨のりの販売に力を入れはじめました。
 
お寿司屋が主な顧客だった時代は卸売業が主要だった為、様々な産地の海苔を扱っておられました。
それを徐々に須磨のりのみに切り替え、今では店頭で取り扱っているほぼ全ての商品が須磨のりになりました。
 
河昌さんにはペット容器に入った卓上用や袋入り、ギフト用など色んな種類はありますが、
ベースとなっているのは「焼き海苔」「味付け海苔」「塩海苔」の三種類。
余談ですが、塩海苔と聞くと韓国のりを思い浮かべますよね。
でも韓国のりはごま油をしようしているのに対して、河昌さんではコーン油を使っておられるので、
あっさりしたシンプルな味わいを楽しむ事ができますよ。
 

《挑戦が生み出す産物》

 
今年で創業50周年を迎えられた河昌さん。
藤井さんご夫妻はとても柔軟な方で、これまでも色んな取組みに積極的に挑戦してこられました。
 
コロナ前はイベントも積極的に開催されていたそうですが、飾り巻き寿司など海苔に関わる事はもちろん、
「この場所(お店)でイベントをやりたいと言ってくれる人がいるなら」と、
陶芸展など海苔とは関わりがないイベントもたくさん開催されていました。
 
中でも藤井さんのお人柄が伺えたのが、自由研究のイベント。
子どもの頃、自由研究の宿題が苦手で毎年苦労していたという藤井さんは、
「今の子どもたちも困ってるんちゃうかなと思って」と、自由研究の為の海苔の勉強会を開催しました。
自分が困っていたから、という優しさから生まれたこのイベントは大好評で、
新聞にも取り上げられたのだそうです。
 

 
そして河昌さんの海苔といえば、可愛らしい“須磨のり”と書かれた文字のパッケージが印象的。
実はこのパッケージを考えたのは、大学院生の方なのだとか。
 
大学院の授業を受け入れるという珍しい取組みをしておられた河昌さん。
その時に来ていた大学院生の方が、須磨のりのロゴを残していってくれたのだそうです。
このロゴを使い始めてから、若い層からの支持も増えたといいます。
まさに、挑戦が生み出した産物だったのですね。
 
 

《ご自身が楽しみながら、私達の食卓を楽しませてくれる河昌さん》

 
“笑顔溢れる食卓作りのお手伝い”というコンセプトを掲げる河昌さん。
そこには、漁師やお客様を大切に思う藤井さんご夫妻の想いが込められていました。
 
「せっかく漁師さんが美味しい海苔を採ってきてくれたんだったら、
ちょっとでもお客様においしさを伝えられるように発信したいし、
そういう気持ちが大きなモチベーションになっています。」と、藤井さん。
 
河昌さんのホームページにも、その想いの一端がにじみ出ていました。
商品紹介や会社紹介に留まらず、海苔のレシピやうんちくのページなどコンテンツが盛りだくさん。
 
中でも印象的なのは、須磨のりのテーマソングのYoutube。
女将さんが歌を歌っていて、ご夫婦で動画にも登場。
このYoutubeがきっかけで、某番組の人間国宝さんにも認定されたそうです。
 
遊び心と美味しい海苔の魅力を伝えたいという
お二人の気持ちが詰まったホームページもぜひご覧ください。
 
この取材を通して、そしてホームページを拝見して、藤井さんご夫妻は人をとても大切にしておられ、
楽しんで色々なことに積極的に取り組んでおられる事を感じる事ができました。
 
美味しいモノを食べて笑顔になっていく、そんな食卓があることはすごく幸せなことです。
これから先は、須磨のりの美味しさを引き継いでいく事を考えたいという藤井さん。
今後の展望にも期待が膨らみます。
 

 

 
<河昌さんのホームページはこちら>
<須磨のりPVはこちら>

【記・撮影 谷口】

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