自然栽培は人を育てることに似ている。芝さんが問う「安心・安全」な野菜とは

自然栽培は人を育てることに似ている。芝さんが問う「安心・安全」な野菜とは

神戸市北区で農業を営む芝さん。
野菜が本来持つ生命力を引き出して、農薬と肥料を使わない自然栽培で野菜を育てています。

安全志向が高まる現在、無農薬で作られた野菜は多くなりましたが、肥料も使わない野菜はあまり目にすることがありません。
芝さんはどうして、無農薬・無肥料で農業を続けているのでしょうか。

「春菊」が証明する、無農薬・無肥料でも野菜はおいしいという事実

野菜を安定的に育てるには、一般的には農薬と肥料が必要です。
肥料を使わなければ作物はよく育つたない、農薬を使わなければ虫害や病気に悩む、とされています。

「私はそれがおかしいと思ったんです。本当に農薬は必要でしょうか?肥料を使わなければ野菜は育たないんでしょうか?雑草はこんなにたくましく育っているのに?」

「植物にはそもそも、肥料がなくても育つ力があります。それなのに肥料をやる。肥料を与えることで成長ホルモンは活性化しますが、一方で抑制ホルモンが弱くなってしまいます。弱くなると病気にかかりやすくなり、結果、必要のない農薬が必要になってしまうんです」

「私が農業を始めたころは、無農薬で無肥料の自然農法が出始めたころでした。興味をもってやってみたら、結果は散々なものでしたが、それでも野菜はできた。できるならやってみようと思い、試行錯誤を繰り返して今に至ります。農薬や肥料がなくても野菜は健全に育つんですよ」

こうして育てた春菊を、その場で「生で」食べさせてもらいました。
春菊を生で食べたら、きっと苦いと思いませんか?でも芝さんの春菊は、えぐみや苦みがなく、難なくそのまま食べることができます。爽やかな香りが鼻に抜ける、まるで香草のようでした。

農薬や肥料を使わなくてもおいしい野菜ができるということを、春菊が証明していました。

美味しい野菜ができる無農薬・無肥料の自然栽培ですが、一方で苦労や大変なことはないのでしょうか?

「みんな聞くんですよ、大変でしょって。でも健全に育てた野菜には虫も来ないし病気にもならないから、農薬や肥料のコストや手間がかからないし、大変ではないんです。人間だって体が弱っているときはインフルエンザにかかりやすいけれど、健康だったらかかりにくいですよね?それと同じです」

「野菜に元気がないときは、観察するんです。これも人間のお医者さんと同じですよ。水が多すぎる、乾燥しているなど、状況を見て水分量を調整します。野菜は作っているんではなく育てているんです。その生育を観察するのが私の仕事!」

「環境を整えてあげるだけで、野菜はよく育ちます。そこに育てる側の『欲』が介入するとうまく育たない。人を育てることと似たようなところがあるのではないでしょうか」

すべての人にとって安心で安全な、ポジティブな世界にしたい

「インターネットの普及もあり、これからはますます安心で安全なものが求められる時代になると思います。誰が作ったかわからない野菜では不安な時代です」

「私の作った野菜が安心で安全であることは、私自身を見てもらえればわかります。自分が作ったものを食べてきたことで、こんなにアトピーがきれいになったから(笑) 安心・安全で、おいしい野菜が『ここにしかない』と思ってもらえるように、野菜作りをしていきたいです」

小さいころアトピーに悩んだと言いながら手で撫でたその顔は、言われなければアトピーがあったことに気づかないほどです。それは「良いものを食べてきたから」だと、芝さんは考えています。

「お客さんが良いものを食べれば食べるほど良いものを作る農家が増えて、するとまたそれが皆さんのもとに返ってくる。誰もが安心・安全なものを食べられて、農家も収入が増える。その循環を作っていきたいんです。ただ、私ひとりでは限界があるから、農家やファームサーカスのような市場、それぞれが高めあって協力し合ってやっていきたいんですよね」

畑仕事に向かない厳しい冬の間に育てているのは原木しいたけ。にょきにょきとかわいいしいたけがたくさん頭を出していました。

「子どもたちがこの風景を見て実際にしいたけを収穫したら、しいたけが嫌いな子でも食べると思いませんか?『食べる』と『作る』を結び付けることによって、食事を豊かにしたいとも考えているんです」

しいたけを栽培する理由はほかにもあります。しいたけづくりが、エネルギーの自給自足と山の若返りにつながるからです。

しいたけづくりの際、小さな木はしいたけの原木に、大きすぎて原木にならないものは、暖房などに使う薪として利用します。このことで木が若がえり、動物たちのえさになるどんぐりが多くなるのです。これは、最近問題となっているイノシシの被害を防ぐことにもなります。

畑での作物栽培が難しい寒い季節にしいたけを栽培することで収入が確保でき、電気製品に頼らず薪を使うことで山の再生も促すことができる———こうして自然のリズムに合わせた生活を営むこと、それが希望にあふれた未来の日本につながります。

無農薬・無肥料でつくられた芝さんの野菜や果物、加工品は、ファームサーカスで購入できます。今回試食した春菊、フルーツのような甘さのトマト、香りや風味豊かな原木しいたけのほか、ジャムや乾燥野菜など、種類は様々。
  
この時期にオススメしたいのは「いちご」です。
 

 
肥料や農薬を使わずきれいな水を糧に成長した艶やかな芝さんのいちごは、まるで赤い宝石のような美しさ。
味わいも、不自然さが一切ないいちご本来の優しい甘さと、硬すぎず柔らかすぎないちょうど良い食感で、いくらでも食べられてしまうおいしさでした。
この艶やかさも、味も食感も、いちご本来の姿で育てるからなしえること。無理して甘さを持たせようとしたり、成長を早めたりすると、芝さんのいちごのような優しい甘さや、宝石のような艶は出ません。自然の力は偉大ですね。
今の時期のいちごは、じっくりと育つのでとても甘くなります。

 
本当の意味で”安心・安全”な芝さんの野菜や果物、加工品を、ぜひ一度お試しください。

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