“変わらないうまさ”から“変わるうまさ”へ。挑戦を続ける六甲ビール

“変わらないうまさ”から“変わるうまさ”へ。挑戦を続ける六甲ビール

神戸市北区に工場を構える、地ビールメーカー、六甲ビール。1995年の開業以来、人々に愛され続けています。
六甲ビールの代表作で、淡い紫のラベルの”六甲ピルスナー”は、神戸の方なら一度は見た事があるのではないでしょうか。創業当時から変わらないおいしさで、今も神戸の色んなお店に置かれ、人気を博しています。その一方でここ数年は、わくわくするような真新しいビールが、続々と開発されています。そしてそのどれもが、味にこだわり抜いて作られていて、飲む人の期待を裏切りません。

六甲ビールで商品が豊富になり始めたのは、今から約5年前。それまでは “おいしいビールを親しみやすい価格で” という想いのもと、定番商品を中心に販売してこられました。そのスタイルを一変し、新商品を次々と展開するように変化していったのは、現社長の中島学さん。中島さんは約6年前から六甲ビールで働き始めて以来、変化に挑戦し続けてこられました。

六甲ビールはもともと、中島さんの父・中島郁夫さんが立ち上げた会社。郁夫さんはサラリーマン時代、出張でドイツにいった事をきっかけに、ビールに魅せられます。いつしか“個性のあるおいしいビールを神戸に”という想いが大きくなり、六甲ビールを立ち上げました。
中島さんはここの長男として生まれましたが、ビールにあまり興味が持てず、進んだ道はIT系のエンジニア。しかし実態のないモノを相手にしている事をつまらなく感じるようになり“目に見える”ものに携わりたい、と思うようになります。

「自分で選んでやった事だから、やめたいとは思わなかった」

目に見える物を求めて、IT業界をやめて六甲ビールに入社。以来中島さんは、大幅にテコ入れを始めました。
働き始めた当初は、ビールに関しては全くの素人。知識もないし、お酒も弱い。それでも、決して諦めず積極的に変化を取り込んでこられました。売り上げはなんと4倍ほどになったといいます。

長い年月をかけて出来上がったものに変化を加えることは、容易なことではありません。周りからの反対や、大変な労力は避けられません。それでも“形のある物”を求めて自分が選んだことだから、やめたい、という想いは湧かなかったそうです。

地元の食材を使ったビールを考えていた時に舞い込んできた、酒米ビールの話

中島さんが六甲ビールに入社された頃と時を同じくして6年前。
大沢町では、地域の活性化を図る地元団体、大沢未来の会による政岡の復活に向けての取組が始まっていました。政岡とは、戦前北神戸で生産が主流だった酒米で、絶滅の危機にある幻の酒米。しかし政岡の復活は困難を極め、一時期は取組そのものが中止されていました。
しかし2年前、FARM CIRCUSが誕生したことで、政岡復活への動きが再開することになります。

『幻の酒米”政岡”を使って酒米ビールを作ろう』

政岡の復活が、FARM CIRCUS、大沢未来の会、そして、六甲ビールの3社が共同で進めるプロジェクトとして動き始めました。
中島さんはずっと、地元の食材を使ったビールを作りたいと思っていたそうです。
そこに持ちかけられたのが、政岡のビールの話だったのです。“これだ”と、依頼を快諾。そこから2年間にわたって、酒米を使ったビールの研究が始まります。

酒米ビールのイメージを覆す“うまさ”への追及

酒米を使ったビールは、これまでも様々なメーカーから販売されていました。しかしこれまでは酒米を“使う事”に価値が置かれ、味は二の次だったのです。中島さんは政岡を使用したビールの開発にあたって“うまさ”にこだわりました。

しかしビールの開発は、決して容易なものではありません。ビールをつくる為には大きな樽を丸ごとひとつ使用する為、長期間試作に使ってしまうと、商品の製造が滞ります。また、一回に使用する材料も、ちょっとやそっとの量ではありません。その為、チャレンジできる回数も、それほど多くはないのです。

台風被害で政岡の収穫量が少なかったり、雑味が残ってしまったり、問題は多くありました。それでも、試行錯誤を重ね、2回の試作を経てやっと“うまい”酒米ビールが完成します

「(できた時は)嬉しかったですね。思っていた味とは違ったけど、すっきりとしたなかにもうまさが感じられる、良いビールができた。」

「変わらない味、というのは意識していない。”変わる事”がこだわりです。」

中島さんの一番のこだわりは“変わる事”。
日々進歩する現代の技術。機械の性能はあがり、食材のクオリティーも高くなっています。そんな時代だからこそ、変わらないのではなく、進化をし続ける事が大切だと、中島さんは考えています。
変わらない事もきっと大切。守る人がいなければ、消えていくばかりです。でも新しい可能性を求める為には、変化が必要です。中島さんの“変化”する事へのこだわりには、力強さと頼もしさが感じられました。

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