自然にあらがわず農業を営む村田夫妻

自然にあらがわず農業を営む村田夫妻

神戸市北区八多町で、ふぁーむ&がーでんヒフミとして農業を営む村田夫妻。
化成肥料と動物性の肥料を与えないスタイルで野菜や果物、ハーブなどを育てています。
おふたりの農場に訪れると、見慣れない斜めの屋根のハウスが佇んでいました。
何でも傾斜ハウスと呼ばれており、農業技術センターが公開している資料をもとに、
風通しの良い理想の形を求めて、丹波産の間伐材を利用し夫の智洋さんが手作りで完成させたのだそう。
ハウスからもひしひしとこだわりを感じ、わくわくしながら中に入ると、
そこには、野菜たちがほうぼうと羽を伸ばして楽しんでいるかのような自由な風景が広がっていました。

「トシさん、とらわれない人ですから」と笑いながら話してくれた妻の靖子さん。
ハウスの中では、苺とニンニクが隣り合わせで育ててあったり、
見たことのないような形に育ったキャベツがあったりとなんとも自由。
自然界のなかで相性が悪いものは一緒に育てないが、
それ以外は型にはめずに育てるようにしているのだそう。

結婚して4年目になるおふたりは、役割分担がしっかりできているようで、
研究熱心で技術肌の智洋さんとそれを上手に人に伝えることが大好きな靖子さん。
もともと愛知で大型農業を営んで9代目になる智洋さんは、
10代後半くらいからオーガニックに興味を持ち、先進の有機農家に研修に行ったり独学で勉強を始め、
30年以上経験と技術を積んで、今の場所とスタイルに行き着いたのだといいます。
妻の靖子さんは、10年くらい園芸療法士として病院で治療の一環として野菜や花を育てる活動を行い、
おいしいものを見て元気になる患者さんの姿をみてやりがいを感じていたのだと話してくれました。

ハウスを見渡すと、土の上には草のチップが敷かれており、
合間からちょこちょこと雑草が顔を覗かせいました。
できるだけ土壌を破壊しないように不耕起栽培といって、
農地を耕さないで栽培している村田夫妻。耕さない代わりに、近くから草を刈り取り集めてきて、
秋のはじめに1年分の草のチップを手作りし、冬のはじめから土の上に敷いているのだそう。
「結構、手間がかかりますけどね、今はこの形が一番いいんじゃないかと思っています」と穏やかに話す智洋さん。

基本的に苗を買うことはなく、種から育てるおふたり。
「トシさん、発芽させるのがとっても上手なんです」と嬉しそうに話す靖子さん。
自宅の一室は、夏野菜を発芽させるために置いているコンテナに占領されているそうです。
そこで温度管理をしっかりと行い丁寧にひとつずつ発芽させるのは技術肌の智洋さんの大切な仕事のひとつ。
発芽した小さな小さな芽をピンセットでひとつずつ植え付けていくのだそうです。
また、発芽させる種もできる限り、自分たちで育てる野菜から摘み取って受け継いでいくのだそう。
「ここの環境で育ったものから種をとるので、この場所に馴染みやすいんですかね、
育てやすいですし、味も良くなるんです」と話してくれた智洋さん。
種が土を覚えているのでしょうか、自然の素晴らしさを改めて感じさせてくれます。

歩いていると、てんとう虫やカエルの姿がちらほらと見えました。
ここでは、てんとう虫もカエルもカナヘビも、野菜の天敵の虫を食べてくれるので、
おふたりの心強い良い助っ人なのだそうです。

自然の恩恵をたっぷり受けながら、
それにあらがうことなく農業を営む村田夫妻。
おふたりの作る野菜はどれもこぶりですが、ぎゅっと味が濃厚で力強さを感じました。

取材日:2017年4月21日 取材場所:神戸市北区八多町 ふぁーむ&がーでん ヒフミ 取材・執筆:濱部 玲美 写真:福原 悟史

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