『農業が魅力的な仕事に!』道場町トマト農家の東馬場農園さん

『農業が魅力的な仕事に!』道場町トマト農家の東馬場農園さん

広大な敷地に、天井が高く床はコンクリート、今の時期は1日に約1.5tのトマトを出荷するハウスがあります。
北区道場町でトマト農業を営まれている株式会社東馬場農園の巨大ハウスです。
本日は東馬場農園 代表取締役の東馬場社長にお話を伺いました。

【農業の厳しさを知るところから、農業への興味を持ち始める】

こちらの農園は祖父の代からこの地域で農業をされており、当時では珍しい専業農家だったそうで、
幼少期はご家族で「カーネーション」を栽培されておられ、他に米なども収穫していた歴史ある農家でした。

しかし輸入物が入り始め単価が下がり、その頃から「農業は厳しい」というイメージを持ち始め、
家族からも「農業なんてするな」と言われ、当時はご自身が農業をやることは考えていなかったそうです。

しかし、大学は農学部に行きその頃から食べ物や養液栽培などに興味を持ち始め、どの作物を扱うかは未定でしたが実家に戻って農業を行うことを決めていたそうです。

卒業後は栃木県の資材メーカーに就職し、5年程研究・開発に注力されたとのことで、その時のテーマが「トマトとイチゴ」だったそうです。

この頃に「これまでの常識ではなくちゃんとトマトやイチゴが育ちやすい環境が作れたら、これまでより2倍3倍の収穫が安定して得られるはず!」と、これからの人生に影響する大きな出会いがありました。

【トマトもまだできていない中でのバイヤーさんとの商談】

約5年勤めた会社を退社され実家に戻り、その頃はまだカーネーションも栽培されておられたので、2000平方メートル(2反)の土地を借りてトマト栽培をスタートしました。

トマトは研究もしていたおかげで知識も経験もあり、かつスーパーの花形商品でもありストーリーもつけやすく作ることはできたのですが、経営と販売は全くの素人でしたのでやはりなかなかうまくいかなかったそうです。

当時はスーパーをとにかくリサーチして品種なども調べ、何が評価されるのかを研究されたそうで、販売に関してはとても運がよく、まだ商品(トマト)もない状況の計画だけでバイヤーさんに話を聞いてもらえ、そこから今もお付き合いのある大手スーパーさんに引き続き出荷をしておられます。

実際の商品がまだない状況で、大手スーパーのバイヤーさんに商談ができるのも、生育には自身があるからこそだとお話を伺いながら納得しました。

トマトは「大玉」「中玉」「ミニ」に大きく分かれ、フルーツみたいにすごく甘くて高いトマトではなく、日常に購入しやすい価格帯の品種は何かと研究した結果、「大玉トマト」を選ばれたそうです。

当時はスーパーのトマトのほとんどが熊本産で「確実に兵庫県産なら比べても勝てる!」と、しっかりと根拠を持ってトマトの品種も決められたそうです。

【「うれしおとまと」の誕生】

東馬場農園さんのトマトには「うれしおとまと」というブランドがあります。

こちらは「うれしい」「おいしい」を重ねて作った東馬場社長考案の造語とのことで、商品デザインはご近所のデザイナー谷さんのアイデアだそうです。

こちらの谷さんは実は東馬場社長の3学年下の後輩になり、独立した時期が同じだそうです。
谷さんのご両親が運営されている保育園に東馬場社長のお子様を預けられたことがきっかけとなり、
独立のタイミングでの偶然の再会で、素晴らしいビジネスパートナーに巡り会えました。

2012年に立ち上げた時はまだ社員は居らず、奥様やご家族、友人で運営していたそうですが、幼少の頃の農業へのイメージを払拭し魅力的な仕事にしたいと言う思いも強くあり、32歳と言う若さで約2年半後の2014年に法人化されました。

その時には新たに4反の農地を運営し、はじめの2反とあわせて合計6反となり、社員が2名とパートさんが15名という大所帯になっていました。

2015年頃には週に2〜3日しか自社農園には居なかったそうですが、法人化を目指した中での働く環境整備や人を育てることへの注力と、それに応えたスタッフの皆様のがんばりもあり、様々なことを乗り越えられる強い組織ができたことを力強くお話してくださいました。

開業時の1年目はがむしゃらに走り続けていたこともあり、人のことでも悩み、ハウスのトマトが全て枯れる夢を何度も見たりしたそうで、日々苦労が絶えない時期もあったこともお話いただきましたが、その後のビジョンの練り直しなども重ねていき、今では社員やパートさんも辞められずに長く勤められているそうです。

【イチゴ栽培を通じた地域貢献での変化】

2017年頃から産地生産量の増加や資材の高騰などから、トマトの相場が下がると予想されていた東馬場社長。
そのような状況において経費を削って農業を営むことも面白くないと考え、2019年より2反の農地で本格的にイチゴの栽培を始められました。

誰が食べても味の違いがわかり、あきらかにわかりやすい商品として取り組んだイチゴですが、
この頃から「地域の方に評価されることに答える形態に変えてきた。」と意識の変化をお話いただきました。

これまでは商品を通じてお客様と接してきたが、イベントなども積極的に実施し、ハウスに来ていただき接することが必要と「体験メイン」のイチゴハウスもこの秋に2反の敷地で建築されるそうです。
ただのイチゴ狩りではなく様々な仕掛けを考えているそうで今からとても楽しみです。

イチゴの他に「ぶどう」も栽培しておられ、こちらは単純に「美味しいのでわざわざ買いに来ていただける商品」という理由と、トマトやイチゴは冬から春に仕事が集中するため、8月9月が収穫となるぶどうは1年を通じて効率も良くマッチしていると、就農家として無駄のない作物を計画的に選ばれているのがわかります。

【農家ではなく経営者としての責任】

学生時代は農学部で学び、勤めている時も「どうやって品質を伸ばせるか」と考えてきた東馬場社長。
とにかく社内では「強みは作ることでそれを伸ばさないといけない」と、全スタッフが作ることに興味を持つことを大事にされておられると熱く語っていただけました。

「出来るだけハウスに居たい」と話される東馬場社長。
そんな社長も開業時の半年は1日の睡眠時間が4時間だったとか。

しかし、幼少の頃の農業のイメージを変えるために法人化した今では週休2日での勤務体系となり、
休みの日はお子様の野球を観に行かれているそうです。
そんな社長の元で働かれている従業員の皆様も、充実したお休みを過ごされていることが想像できます。

「農業も色々なスタイルがあるべきで、そのうちのひとつとしてみてほしい」と話される背景には、
「トマトの生育を考えて細かくコントロールしている環境があるから」と納得のいく説明をいただきました。

「どの時期にどれくらい採れる」と、ほぼ計画的にその通り収穫ができている東馬場農園は、日々のデータ収集から状態を把握し、適切な対応をすることで年間通じて安定生産を実現しているとのこと。

「だからこそしっかり休みもとれて給与や賞与も出せる」と、会社経営の大事な部分を農業という分野で実現されておられます。

「今後、仕事の選択肢のひとつに農業が出てくるように」と、農業のイメージを変えるべく活動を実際の事業活動で実践されている姿に、これからの新しい就農のあり方を具体的に体感することができた取材となりました。

事業として農業の可能性をまだまだ引き出す東馬場農園の活動に、今後も多くの注目が集まると確信しました。

東馬場農園 公式サイト

【記・撮影 谷口】

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